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農業経営には賠償責任リスクが潜んでいる
農業経営では、対外的な損害賠償リスクを把握し管理していかなければなりません。契約の不履行(債務不履行)や不法行為によって損害賠償責任を負うことが考えられます。「慰謝料」も、精神的な損害の補償を指し、損害賠償の一種です。
農業に関するリスクの例
農業に関するリスクの例としては次のようなものがあります。
まず、農業施設や農作業に関連して「施設リスク」があります。施設の管理が不十分で来訪者や通行人がケガをしたケースなどです。
不十分な施設管理の例として、設置方法が不適切であったためハウスが破損した・直売所の看板が落下した、むやみに積み上げていたコンテナ倒壊した、ため池の柵を壊れたまま放置した、などがあります。
ほかにも、農器具・機械の操作を誤り近くに停めてあった自動車を傷付けた、説明不足で農作業体験の参加者がケガをした、飛散防止対策が不十分で隣地の農作物に農薬が飛散し出荷できなくなった(または健康被害が出た)などが考えられます。
生産した農産物や加工品に関連して「生産物リスク」があります。出荷した農産物や加工品が原因となって食中毒が発生した、出荷した加工品に異物が混入していて健康被害が出たなどが考えられます。
また、第三者から預かっている物に関連して「保管物リスク」があります。農業体験中に預かっていた体験者の貴重品が盗難に遭った、借りていた農機具を壊したなど物について滅失・毀損等などが考えられます。
事故には適時に適切な対応が必要
リスクを全くなくすことは非常に難しいですので、できる限り減らすことを目指した日頃の意識や準備が大切になってきます。上記のリスクの例などを参考に、まずは自社のリスクの点検と事故防止策を検討すると良いでしょう。
しかし、もしもリスクが顕在化し事故などが発生してしまった場合には、損害賠償を含めた事故への対応を早期に適切に行うことが二次被害やイメージ低下の防止につながります。
たまに農業体験などの際に「体験中に事故等が発生しても農園側は責任を一切負わない」ことを了承させる例を見受けます。しかし、事業者(農園側)の損害賠償責任を免除する条項については、消費者契約法により無効とされる可能性が高いため、このような対応を取っているからといって、必ずしも損害賠償責任を免れられるとは限りませんので注意が必要です。
もしも損害賠償をすることになった場合の経済的負担を軽減するためには、農業者向けの賠償責任保険などを活用することも有用と考えられます。
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