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リコールをする場合
農産物に基準値を超える農薬が残留していた、加工品に異物が混入していた、商品ラベル等の表記に誤りがあったなど、食品の安全性に疑いがある場合には、出荷品を回収しなければならない事態があり得ます。リコールと呼ばれる措置の一つです。自主回収もあれば行政から回収の命令が出る場合もあります。
リコールによる損失
出荷品を回収するため、その商品についての収益は上がりません。回収にかかる運賃、リコール告知や謝罪広告の費用、被害が出た場合にはその対応費用(被害相談等の受付人員の確保、アドバイスを求める専門家への費用、損害賠償等)等金銭的な負担が生じ得ます。
さらには、これらの対応にかかる労力、精神的な落胆、従業員の士気の低下なども予想され、農業経営に大きなマイナスを及ぼします。
また、安全性に疑いのある食品を出荷したことで企業イメージが悪くなり、顧客離れなどその後の経営にも影響する可能性があります。
防止策と対応
食品の安全にかかわる問題は、事故等を未然に防ぐため法令による規制や行政の指針が出されていますので、少なくともこれらに沿った取扱いが必要です。
残留農薬の問題については、農薬の商品ラベル等に記された使用量や使用時期、使用回数等を守り、その記帳を確実に行うなどで誤った使用方法を防止することが大切です。また、希釈倍率の誤りや散布器具の洗浄不足などが残留農薬の原因と推定される例もあるようですので、注意が必要です。
農産加工品の異物混入については、加工機械・装置の点検、害虫防止駆除対策など日常的な安全・衛生対策が必要です。もし、事故が起きてしまったら、製造ラインを停止させ、迅速に異物混入原因を特定し二次被害を防ぐことも必要になります。この間は製造ができませんが、事故後の取引先等からの信頼を確保するためには、原因の特定と特定された原因に対する対応が必須になります。
商品ラベルの表記については、単に表記の誤植であるのか、表記と商品内容(使用原材料・添加物や賞味期限等)が一致していないのかの事実確認が必要です。
特に加工を委託する場合には自社が予定した原材料や添加物等が使われているかの確認も大切です。消費者はその表記を信用して購入するため小さな誤記であっても大きな事故につながります。たとえば、その加工品に使用されている原材料に表記漏れがあった場合に、その原材料についてアレルギーがある人が口にしてしまえば生命の危険すらあります。
過去の裁判例
生産者・製造者の食品の安全性確保についての責任は非常に重く、過去の裁判例でも、「生産者や製造者は、食品の安全性確保のための万全の体制を整えること、万一安全性に疑問のある食品を販売したと分かった場合には直ちに回収するなどの措置をとり、消費者の健康被害を生じさせないように手だてを尽くす責任がある」といった判断が下されています。
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