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個人経営における課税の仕組み
個人経営の場合、農業所得も含めた事業所得と他の所得を合算して所得税がかかります。
ただし、所得税は、所得金額の全額に対してかかるのではなく、所得の金額から基礎控除や扶養控除など各種の所得控除を差し引いた残りの所得に対してかかります。
所得税は、毎年1月1日から12月31日までの1年間に生じたすべての所得の金額について計算します。
その年中の所得を計算し、その所得金額に対する税額を算出して翌年の3月15日までの間に申告と納税をすることになっています。この申告を確定申告といいます。
所得税の税率は、所得が多くなるほど多くなった部分の税率が高くなっています。つまり、所得が多くて税金を負担する力(担税力)が大きい人ほど高額な所得税がかかります。これを累進税率と呼んでいます。
所得の種類と非課税所得や分離課税所得
個人の所得は、事業所得や不動産所得など10種類に分類されます。事業所得はさらに農業所得と営業等所得に分けられます。
農業関連の所得であっても、たとえば農業用の預金の利子は、利子所得、農業機械の売却は譲渡所得となりますので、農業所得の収入金額から除外します。なお、預金の利子は、源泉分離課税のため確定申告する必要はありません。
個人の場合、固定資産について受け取った共済金は、所得税が非課税となります。ただし、非課税とされる共済金からは、必要経費に算入される金額を補填する金額を控除します。
たとえば、固定資産である搾乳牛・繁殖牛などの生物が死亡した場合、受領した受取共済金のうち資産損失(帳簿価額+売却経費-売却収入)を超える部分について所得税が非課税となります。
農業所得と収穫基準
農業所得とは、農産物の栽培等の事業から生ずる所得をいいます。
農業とは、
①米、麦その他の穀物、馬鈴しょ、甘しょ、たばこ、野菜、花、種苗その他の圃場作物、果樹、樹園の生産物又は温室その他特殊施設を用いてする園芸作物の栽培を行う事業、②繭又は蚕種の生産を行う事業、③主として①・②の栽培又は生産をする者が兼営するわら工品その他これに類する物の生産、家畜、家きん、毛皮獣若しくは蜂の育成、肥育、採卵若しくはみつの採取又は酪農品の生産を行う事業をいいます。
肉用牛免税(肉用牛の売却による農業所得の課税の特例)は農業を営む個人に適用されますので、肉用牛の売却による所得が農業所得にならない場合は、肉用牛免税の適用を受けることができません。
個人農業者において農産物を収穫した場合の収入金額の計上時期とその計算は、「収穫基準」によるのが原則です。
収穫基準では、農業者が農産物を収穫した場合に、その収穫価額相当額を収穫年分の収入金額に算入します。収穫基準と言っても、実際には、収穫した農産物全体の数量により収穫価額を計算して収入金額に計上するわけではありません。
実務上は、販売金額を基礎とし、これに家事消費・事業消費金額と期末農産物棚卸高を収穫価額で評価した金額を加えて、収入金額に計上します。
米麦等の穀類の記帳の方法について、収穫時には農産物受払帳に数量のみ記載しておき、単価、金額は記載を省略します。「野菜等の生鮮な農産物」については収穫時の記載を省略して差し支えありません。
個人経営の必要経費の特例
生計を一にする配偶者その他の親族に支払う給与賃金や地代家賃などは、原則として必要経費になりません。逆に、受取った人も所得として考えません。
ただし、事業主(子)が生計を一にする親族(親)から農業のために借りた土地・建物に生じた固定資産税や減価償却費、親族名義の事業用借入金の利息も、同様に子の農業の必要経費になります。
また、青色事業専従者給与は、青色申告者の特典として、必要経費にすることができます。なお、青色申告者でない人(白色申告者)については、事業専従者控除が必要経費になります。
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