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1.商談会に向けた事前準備の重要性
販路拡大に向けた、小売業や外食産業のバイヤーへの営業提案(商談)の場は、「組織」の代表者同士の接点です。
つまり、相対するのはバイヤー個人ですが、お互いに組織を代表して商談に臨むのであって、提案は「組織」に対して行うという意識を持つ必要があります。提案先の組織をよく理解したうえで、目の前のバイヤーに対し、その組織の要求や期待に応える提案を行うことが商談成功のポイントと言えます。
その意味で、商談会への参加にあたっては、商品に関する情報を十分に伝えることができるツールをしっかりと事前に準備することが必要です。FCPシートなどはしっかり記入しましょう。
商品の情報
一般的に、商品についてバイヤーが知りたいことは、以下のようなものが挙げられます。商品のPRシートやカタログ、FCPシートで以下のような情報を伝える必要があります。
□ 商品名、JANコード (特に加工食品はJANコード取得が重要)
□ 価格(販売価格・納入価格)
□ 賞味期限(製造日から〇〇日 など)
□ 主材料産地(地域名)
□ 原材料表示(特に加工品は重要、添加物も含め)
□ 内容量
□ 1ケースあたり入数(=出荷単位)
□ 最低発注単位(最低何ケースから購入できるのか)
□ 発注リードタイム(発注後の納期)
□ 年間出荷可能数(全店へ配荷できるのか?)
□ 保存温度帯(冷凍・冷蔵・常温)
□ パッケージサイズ・重量(陳列の時に、どれくらい場所をとるのか)
□ 認証の有無(JAS、GAP、HACCP、ISO等)
□ 商品の特徴・PRポイント
□ 食べ方や利用シーン(お客様の声やシェフの声があるとさらにGOOD)
□ 写真(現物があるのが理想・試食ができればなお良し)
□ アレルギー表示(小麦・卵・そば・乳・かに・えび)
組織の情報
さらに、バイヤーは、あなたと取引を考える上で、取引先の組織情報として、以下のような情報について確認したいと考えています。
□ 企業名
□ 沿革
□ 売上高、資本金、従業員数
□ ホームページ
□ 所在地
□ 担当者名
□ 連絡先(電話番号、メール、FAX番号)
物流・商流の情報
また、商流と物流についての確認は必須となります。
商流として最低限確認するべきこと:
□ 取引条件の確認
□ 直接取引か、卸売業などが入るのか
物流として最低限確認するべきこと:
□ コールドチェーンがつながっているか?
□ 納入のタイミング、方法
2.商談会での当日の動き方
展示会・商談会において、商談を増やす、名刺獲得枚数を増やすには、ブースに立寄ってもらうこと、つまり足を止めさせることが重要です。
バイヤーが足を止めるポイントには以下のようなものがあります。
○ 自分が探している商品であった場合(特に何もしなくてもOK)
○ 自分にかかわるカテゴリーで、珍しい商品を見かけた場合
〇 気になる文言が書かれたPOPがあった場合
○ 試食等で呼び止められた場合
○ 何かを貰える場合
つまり、ポイントは、ブースを見て立ち止まるか、声を掛けられて立ち止まるか、です。
そのために、目立つ商品・珍しい商品などインパクトのあるものを陳列することも一つの方法です。人が集まっているところには、もっと人が集まってくるものです。ただし、インパクトを求めすぎて、本末転倒にならないように注意が必要です。
また、商談会のブースにおいては、たくさんの種類の商品を陳列すれば良いわけではない点にも注意が必要です。多くの種類の商品をテーブルの上に乗せれば乗せるほど、1種類あたりの陳列スペースは少なくなり、あまりに商品が多いと、何を売り込みたいのか分からなくなってしまうためです。
ごちゃごちゃしていると印象に残りにくいため、商品の大きさにもよりますが、メインで出す商品は、一般的なテーブルサイズの場合、3〜5種類程度を目安にする必要があります。
3.限られた時間を有効に使う
商談会では、意思決定できる人が現場にいる状態がベストです。納期や価格等で即対応ができるためです。
基本的に商談会などでは、バイヤーは多くの企業や人と接しています。そのため、コンタクトした中で対応が早い事業者から契約が決まっていくと考えた方が良いです。
商談後のメールの返信率も商談会から時間が空くと徐々に下がる傾向にあり、早めにアクションしないと忘れられていきます。そのため、商談会終了後のお礼メールやサンプル依頼への対応は即実施することが基本となります。
4.アフターフォローの重要性
商談後にサンプルや見積もりを送付した後は、きちんとフォローを行いましょう。「送りっぱなし」になっていないか、しっかりと確認しましょう。
□ サンプルを送付して、そのままになっていないか?
□ 見積もりを送付後、先方からの連絡が無いままになっていないか?
バイヤーが単純に忘れてしまっているケースも多いため、サンプル送付後は到着確認とあわせて、食べた感想をヒアリングしたり、見積送付後も到着確認とあわせ、価格感の相違を確認したりして、フォローすることが重要です。
それぞれ、しっかりとフォローしたうえで「追加で対応が必要」なものがあれば、速やかに対応しましょう。
なお、バイヤーとの商談内容は次の商談へのヒントにあふれています。ダメだしされたものは修正を行い、バイヤーとの商談でウケたポイントは、別のバイヤーにもウケる可能性があるため、FCPシートに盛り込むほか、次の商談トークにも活用しましょう。
質問されて答えに窮したものがあれば、次は答えられるように想定問答集を作成しておくことも重要です。バイヤーから得られた情報で有益なものは、所属組織内で共有しましょう。
当該コンテンツは、公益財団法人 流通経済研究所 農業・地域振興研究開発室 折笠室長の分析に基づき作成されています。