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収入保険制度は、2019年から導入された新たな農業経営のセーフティネットで、農業経営者ごとの収入全体を見て総合的に対応することを目指すものです。
収入保険に加入できるのは、青色申告(現金主義の特例適用者を除く。)を行っている農業者(個人・法人)で、複式簿記でなく簡易簿記でもかまいません。
収入保険制度は、農作物共済等の農業共済制度やナラシ対策(米・畑作物の収入減少影響緩和対策や加工原料乳生産者経営安定対策など)の類似制度との重複加入はできません。
ただし、農業共済制度のうち、固定資産的家畜を対象とする死亡廃用共済、疾病傷害共済、樹体共済及び園芸施設共済(施設内農作物を共済目的としないものに限る。)については、収入保険制度と重複して利用できます。
また、2021年から当分の間、初めて収入保険に加入する場合、1年に限り野菜価格安定制度と同時利用できるようになります。
※農水省HPより
決算整理における保険金等の見積もり計上
収入保険の保険金及び特約補塡金のうち国庫補助相当分(保険金等)は、保険期間の年又は事業年度分の総収入金額(個人)又は益金(法人)の額に算入します。このため、当年収入が自己責任部分(通常は10%)を超えて減収となった場合は、保険期間の決算において保険金等を見積り計上します。
たとえば、基準収入10,000千円に対して30%の減収となった場合の保険金等の金額と仕訳は次のようになります。
900千円(特約補塡金)×75%(国庫補助相当分)+900千円(保険金)=1,575千円
保険金等を請求していない期末の時点では保険金請求権が確定していないため、上記の仕訳のように「未決算」勘定を使用するのが基本となりますが、「未収入金」勘定を用いてもかまいません。個人の場合、所得税青色申告決算書(農業所得用)の貸借対照表において、未決算は「未収金」に含めます。
保険金等の請求
所得税や法人税の確定申告の後、実際に保険金等を請求したときは、未収入金に振り替えます。見積り計上と請求額とに差額が生じたときは、その差額を雑収入又は雑損失として経理します。
たとえば、保険金等の支払いを請求して通知された金額が見積額より1,000円多かった場合の仕訳は次のとおりです。
見積り計上と請求額とに差額が生じない場合は、上記の仕訳を省略して、見積もり計上の仕訳の借方を未決算でなく未収入金としてもかまいません。
補塡金の入金
補塡金が入金したときは、未収入金に振り替えた保険金等の額に加えて、特約補塡金のうち積立金相当分を「経営保険積立金」の入金として経理します。上記の例の場合の仕訳は次のとおりです。
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