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構成員(出資者)の違い
株式会社や合同会社は、出資者が1人でも設立できますが、農事組合法人は、農民3人以上が出資者にならないと設立できません。ただし、家族経営であっても家族従事者は農民になりますので、3人以上いれば家族従事者の出資だけで農事組合法人を設立できます。
かつては農事組合法人には「特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入」が適用されなかったため、家族経営の法人化において農事組合法人を選択することもありました。しかしながら、この制度が廃止されたため、家族経営で農事組合法人を選択するメリットはほとんどなくなりました。
農地所有適格法人における議決権要件との関係で、株式会社と合同会社とでは農業関係者以外からの出資による資金調達に違いがあります。
株式会社の場合は農業関係者の議決権が過半であれば良いことから、無議決権株式であれば出資による資金調達について株主の数や出資の額に制限がありません。
これに対して、合同会社の場合は農業関係者が社員(出資者)の過半でなければならないため、農業関係者以外の社員は社員総数の半数未満でなければならず、農業関係者以外からの増資による資金調達が事実上、制限されることになります。
●法人形態の違いによる構成員や意思決定の違い
意思決定
農事組合法人の場合、一人一票制が迅速な意思決定を妨げることが多いので注意が必要です。とくに数戸共同で法人化する場合には、農事組合法人はお勧めできません。
数戸共同の場合、設立当初は経営目的などについて共通認識ができており、参加意識も高いのですが、数年もすると構成員の間で協業経営に対する温度差が生まれてきます。このとき経営者が新しい事業展開などをしようとしても、組合の意思決定としては保守的な判断になりがちです。
さらに、資本充実のため、経営者が増資を引き受けようとしても、一人一票制のもとでは増資しても経営のイニシアティブを取ることは難しいのが現実です。
これに対して、家族経営を法人化する場合、経営者が誰であるかは明確になっており、農事組合法人にしたからといって意思決定が問題になることはないでしょう。
なお、農事組合法人として設立した場合であっても、株式会社に組織変更することができ、組織変更に伴って法人税がかかることはありません。一方、株式会社は農事組合法人に組織変更することができないため、どうしても農事組合法人にしたい場合には、新規に農事組合法人を設立する必要があります。
この場合、旧経営体である株式会社は休眠させるか解散することになりますが、解散する場合には残余財産の分配によるみなし配当所得課税で構成員に税負担が生ずることがあります。
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