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個人事業を法人に承継する場合
個人事業の法人への承継は、事業用資産の譲渡により行います。
棚卸資産以外の事業用資産の譲渡で譲渡所得の対象となるものは、時価の2分の1以上の価額で行います。時価の2分の1未満の譲渡価格で売買した場合、譲渡した個人には時価で譲渡したものとみなして譲渡所得税が課税され、譲り受けた法人においては時価と譲渡価額との差額が受贈益として法人税が課税されます。
法人の事業を後継者に承継する場合
法人の事業を後継者に承継する方法としては、株式・出資(株式等)を有償譲渡する方法のほか、株式等を無償譲渡(贈与)する方法があります。
株式等の贈与によって法人の事業を後継者に承継する場合、法人版事業承継税制の活用が考えられます。経営者等が所有する株式等を後継者に生前贈与した場合に、贈与税の納税猶予が受けられる制度です。
法人版事業承継税制には一般措置と特例措置があり、一般措置では総株式数の最大3分の2までですが、2027年までの特例措置では全株式が納税猶予の対象となります。
法人版事業承継税制を活用して生前贈与した株式等は、相続のときに贈与時の評価額で取得したものとみなされて相続税の課税対象となります。
法人版事業承継税制には贈与税だけでなく相続税の納税猶予があり、相続時にも法人版事業承継税制を活用できます。
納税猶予の要件を満たさなくなった場合のリスクを考慮し、贈与時における株式等の評価額をできる限り低くしておくとよいでしょう。たとえば、贈与の前にアグリビジネス投資育成(株)からの出資を受けることで株式等の評価額が下がることがあります。
法人版事業承継税制の適用を受けるためには、2024年3月31日(※)までに「特例承継計画」を都道府県知事に提出し、確認を受ける必要があります。また、後継者の3年以上役員要件がありますので、承継する経営者を早めに役員に選任しておく必要があります。
(※)令和4年度税制改正により、期限が1年延長されました。
法人の事業を他の法人に承継する場合
法人の事業を他の法人へ承継する一般的な方法としては、「事業譲渡」、「株式等の譲渡」、「合併」が考えられます。
事業譲渡は、1つ1つの事業用資産を他の法人へ譲渡します。一般的な売買と同様に考え、譲渡益について法人税が課税され、課税資産の譲渡について消費税が課税されます。
株式等の譲渡は、株主等が持つ法人の株式又は出資を他の法人または他の法人の経営者に譲渡します。
旧株主に対して、株式等の譲渡価額と帳簿価額(一般的には出資した金額)との差額(所得)について、分離課税により20.315%(所得税15.315%、住民税5%)が課税されます。株式等の譲渡は消費税の非課税取引ですので、消費税の課税はありません。
合併は、一般的には、事業を承継する側を被合併法人(合併後消滅)、事業の承継を受ける側を合併法人(合併後、事業継続)とし、合併法人は被合併法人の権利義務のすべてを引き継ぎます。
なお、農事組合法人は、他の農事組合法人との合併をすることはできますが、株式会社と合併することはできません。農事組合法人が株式会社と合併する場合は、合併に先立って、農事組合法人を株式会社とする組織変更を行います。
当該コンテンツは、「アグリビジネス・ソリューションズ株式会社」の分析・調査に基づき作成されております。