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クラウドファンディングとは
クラウドファンディングという言葉を聞く機会が増えている人も多いでしょう。
クラウドファンディング(英語: crowdfunding)とは、群衆 (crowd) と資金調達 (funding) を組み合わせた造語であり、多数の人による少額の資金が他の人々や組織に財源の提供や協力などを行うことを意味します(参考:wikipedia)。
日本に昔からある言葉でいえば、「無尽」に近いものといえるでしょう。つまり、何かやりたいことがあった場合に、自分の資金だけでは足りない場合に、共感してくれる多くの人から、少しずつお金を出してもらって、それを実現するものです。「無尽」だと、お寺などに人が集まって、一定額を出し合って、それを誰かに渡す、といった運用でしたが、それをインターネットを使って実施するようなものです。インターネットを使うことで、容易に不特定多数から資金提供を受けることができるのです。もともとは、IT機器などの開発を行いたいベンチャーがユーザー確保と資金調達を開発前に実施するような使い方がメインでした。
クラウドファンディングのメリット
クラウドファンディングの経営上の最大のメリットは、投資リスクを減らせることです。
例えばリンゴジュースを開発したいというリンゴを生産する農業法人があったとします。リンゴジュースの加工工場に相談したら、1000本生産で100万円の見積が出てきたとしましょう。通常は、ここで自社の資金から100万円を投資として拠出し、1000本のリンゴジュースを製造し、販売することで投資分を回収することになります。しかし、クラウドファンディングであれば、先払いで資金を調達できるのです。
具体的には「リンゴジュースを作りたい。100万円の費用がかかるから支援してほしい。3000円の支援で、通常2000円/本で売る予定のリンゴジュースを2本、お礼として返送します」という形で資金を集めるとしましょう。ここで300人から支援が入ったとすると、90万円・600本の先払い注文を受けたことになります。残りの10万円を自分で出せば、400本の在庫が手に入ります。100万円を払って、1000本の在庫を抱えてから販売するよりも、小さいリスクで商品開発ができるのです。
<クラウドファンディングの仕組み(イメージ)>
また、クラウドファンディングは「事業に共感する不特定多数から、インターネットで資金を集める」という性質上、社会貢献的な取り組みの資金調達にも使われます。募金の拡大版のようなイメージです。しかしかながら、基本的に「社会課題の解決」を標榜して資金調達を行っても、なかなか目標とする金額を達成することは難しい状況です。多くの消費者は、社会貢献のためだけに、なかなかお金を出してはくれないのです。
この背景には、日本では、欧米ほど「投資」の概念を理解している消費者が少なく、確実なリターンが求められることがあります。そのため、クラウドファンディングのWEBサイトとして大手の一つであるMakuakeなどは、「通販」に近いサイトになっており、返礼品が重要な要素になっています。
クラウドファンディングは、一般的には専用のプラットフォーム(WEBサービス)を利用して実施されることがほとんどです。
以下に代表的なサービスを3つ紹介します。
※各種数字は、概算であり、参考値です。
詳細はそれぞれの表の中を確認してもらえればと思いますが、サービスによって特性や手数料率が異なるため、自分の実施したい内容などによって利用するサービスを選択する必要があります。
農業分野でも、クラウドファンディングを活用する方が増えてきています。
例えば、長野のカネシゲ農園では、規格外リンゴの加工品づくりにクラウドファンディングを活用し(https://readyfor.jp/projects/kaneshige)、目標金額を達成しています。
クラウドファンディングに取り組むうえで重要なポイント
では、クラウドファンディングに取り組むうえで重要なポイントは何でしょうか。
まず1つは、クラウドファンディングの目的を消費者に向けても、自分たちの中でも明確にすることです。単純に、通販の延長線上で、既存の商品を対象に実施しても上手くいかないことが多いのです。クラウドファンディングサイトによっては新規性の評価項目があり、掲載審査に通らないこともあります。つまり、インターネット通販と何が違うのか、どうしてクラウドファンディングで実施するのかを明確にしておく必要があります。さらに、クラウドファンディングの経営・マーケティング視点での目的も整理しておく必要があります。新商品の告知(新商品の広告宣伝活動として実施)なのか、商品の販売(理由をつけてクラウドファンディングを販売サイトとして使う)なのか、商品開発がしたいからなのか、テストマーケティングの一環なのか、自社や商品のファンづくりのためなのか、話題づくりなのか、それによって表現やアプローチは当然ながら、変わっていくはずです。
つぎに、クラウドファンディングの実施にあたっては、事前告知や実施中のプロモーション・情報発信が重要です。クラウドファンディングに慣れている方は、スタートダッシュで成功する確率がなんとなくわかる(当初の1週間で30%以上の達成率だと、成功しやすい)と言います。そのため、クラウドファンディング開始前のプロモーションが重要です。関係者のSNSアカウントなどで事前告知を積極的に実施することが望ましいと言えます。また、クラウドファンディングの実施期間中も、支援者へのメッセージや進捗報告機能を使い、積極的な情報発信を行っていくことが重要ですし、ファンづくりにもつながります。
また、初めてクラウドファンディングに取り組む場合などは、支援者の多くは「知り合い」と「知り合いの知り合い」といった、ある程度SNSなどでつながっている知り合いからの支援がメインとなります。そのため、関係者全体でSNSの個人アカウントなどを活用し、告知・プロモーションを実施していく必要があるのです。
加えて、返礼品と支援金額のバランス、支援金額ごとのメニューをしっかり考えることが重要です。ある意味、通販に近いところがありますので、返礼品の種類、支援金額とのバランスなどを考慮しながら、支援を検討する人に複数の選択肢を用意することができることが望ましいと言えます。「1万円の支援」といった支援メニューだけですと、5000円なら支援できる人、3000円から支援できる人を取りこぼす可能性がありますし、もっと多くの金額を支援してくれる可能性がある人を1万円の支援にしてしまうかもしれません。
6次産業化や、新しい品種・品目への投資を考える場合、あるいは消費者への直接の商品販売などを検討する場合、新たなチャネル開拓と資金調達手法としてクラウドファンディングも視野にいれてみてはいかがでしょうか?
当該コンテンツは、公益財団法人 流通経済研究所 農業・環境・地域部門 折笠主席研究員の分析に基づき作成されています。