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被保険者の種別と加入する公的年金制度
老後の生活の基盤となる公的年金は、加入している年金制度によって、受取る年金額が異なります。現在の日本の年金制度は下の図のようになっており、おもに職業によって3種類の種別に分けられ、どの制度に加入するかは、種別によって異なります。
農業に従事している者であっても、農業者、夫が会社員で妻が農業に従事する兼業農家、夫は農業法人の職員で妻はパートタイマーなど就業形態の違いによっても加入する年金は違い、第1号被保険者から第3号被保険者に分けられます。
- 農業者とその配偶者は、第1号被保険者
- 農業法人の役職員は、第2号被保険者
- 第2号被保険者の被扶養配偶者は、第3号被保険者
また、現在の日本の年金制度は下の図のように「3階建て」になっています。
1階部分は、国民年金(基礎年金)で、20歳以上の全国民が加入を義務づけられています。これにより原則として誰もが65歳から老齢基礎年金を受取ることができます。
2階部分は、民間の会社員や公務員が加入する「厚生年金」です。これらは国民年金と同じように強制加入となっています。
厚生年金加入者の3階部分(厚生年金基金等)は任意加入です。
農業者は、任意加入である農業者年金などに加入することによって2階部分をつくることができます。
基礎年金と厚生年金の保険給付
基礎年金と厚生年金は、国民が①老齢になったとき、②障害者になったとき、③死亡したときに次表の保険給付を行っています。
保険給付の条件 | 給付される保険 |
---|---|
老齢になったとき | 60歳代前半から65歳まで特別支給の老齢厚生年金 65歳から老齢基礎年金と老齢厚生年金 |
障害者になったとき | 障害基礎年金(1級、2級の障害者) 障害厚生年金(1級、2級、3級の障害者) 障害手当金(3級より軽度の障害がある者、障害厚生年金より支給) |
死亡したとき | 遺族が子のある妻や子のとき・・遺族基礎年金と遺族厚生年金 遺族が子のない妻、55歳以上の夫・父母・祖父母または孫のとき・・遺族厚生年金 |
老齢基礎年金
国民年金は、原則として20歳以上60歳未満のすべての国民に加入が義務づけられ、65歳から老齢基礎年金が支給されます。
1 支給要件
老齢基礎年金は、原則として、①65歳に達したときに、②保険料納付済期間と保険料免除期間を合算して10年以上あるときに支給されます。また、特例として次の場合も支給要件を満たします。
保険料納付済期間※1+保険料免除期間※2+合算対象期間※3=10年以上
※1 保険料納付済期間とは、第1号被保険者として保険料を納めた期間、第2号被保険者で20歳以上60歳未満の期間、第3号被保険者であった期間の合計
※2 保険料免除期間とは、保険料納付の免除を認められた期間で、全額免除期間の年金額は1/2(平成21年3月分までは1/3)に、3/4免除期間の年金額は5/8(平成21年3月分までは1/2)、半額免除期間の年金額は6/8(平成21年3月分までは2/3)に、1/4免除期間の年金額は7/8(平成21年3月分までは5/6)になる。
※3 合算対象期間とは、受給資格期間には算入するが、実際の年金額の算定には反映されない期間。
2 受給額
20歳から60歳になるまでの40年間の加入を限度とし、未納期間や免除期間に応じて減額されます。40年間のすべてが保険料納付済期間である者で満額の年金(年額795,000円/令和5年)の年金を受給できます。
老齢厚生年金
厚生年金保険は被用者(民間会社に勤めるサラリーマン等)を対象に被保険者や被保険者であった者が老齢になったとき、病気やケガがもとで障害を負い働けなくなったとき、死亡して扶養している家族が残されたときなどに、基礎年金の上乗せ給付を支給することによって所得を補償することを主な目的とします。
老齢厚生年金は、原則として65歳から受給でき、老齢基礎年金に上乗せして支給されます。現在は、60〜64歳の間は「特別支給の老齢厚生年金」が支給され、65歳から「老齢厚生年金」が支給されています。
1 支給要件
65歳から支給される老齢厚生年金は、次のいずれにも該当する場合に支給されます。
イ 厚生年金の被保険者期間を有すること
ロ 65歳以上であること
ハ 国民年金の保険料納付済期間と保険料免除期間とは合算した期間が10年以上あること
2 老齢厚生年金の構成
※1 特別支給の老齢厚生年金
60歳から65歳になるまでの間、老齢基礎年金を受ける資格期間(公的年金の加入期間が原則として10年以上)があって厚生年金の加入期間が1年以上ある人に支給されます。特別支給の老齢厚生年金から報酬比例部分相当の老齢厚生年金への切り替えは、生年月日に応じて段階的に行われ、昭和24年(女性は昭和29年)4月2日以降生まれの人には支給されなくなります。
※2 経過的加算
60歳台前半の老齢厚生年金の定額部分の額と、65歳から支給される老齢基礎年金の額に差があるときに、その差額を老齢厚生年金に加算して支給します。
※3 加給年金額
加入者に扶養者がいる場合に付加されます。加給年金額は、妻が65歳になって老齢基礎年金が支給されるようになると支給されなくなりますが、その分を「振替加算」として妻の老齢基礎年金にプラスして支給されるようになります。
老齢厚生年金の支給年齢
65歳前に支給される「特別支給の老齢厚生年金」は、「報酬比例部分+定額部分」ですが、昭和16年4月2日以降生まれの男性からは段階的に「報酬比例部分」のみの部分年金に切り替えられています。(女性は5年遅れで切り替えられています。)
- 昭和28年4月2日以降生まれの男性からは、部分年金も段階的に引き上げられます。(女性は5年遅れで引き上げられます。)
- 昭和36年4月2日以降生まれの男性からは、年金の支給開始年齢は、65歳となります。(女性は5年遅れて実施となります。)
男性
ⅰ)平成25年度以降に定年(60歳)を迎える男性(昭和28年4月2日〜36年4月1日生まれ)
ⅱ)昭和36年4月2日以降に生まれた男性
女性
ⅰ)平成26年度以降に定年(60歳)を迎える女性(昭和29年4月2日〜33年4月1日生まれ)
ⅱ)平成30年以降に定年(60歳)を迎える女性(昭和33年4月2日〜昭和41年4月1日生まれ)
ⅲ)昭和41年4月2日以降に生まれた女性
障害厚生年金
障害厚生年金は、初診日に厚生年金保険の被保険者である人が、その病気・けがで障害認定日(初診日から1年6ヵ月を経過した日か、その期間内に治るか症状が固定した日)に1級〜3級の障害が残った場合に支給されます。
1級・2級の場合は、障害厚生年金に加えて障害基礎年金が支給されます。初診日に厚生年金保険の被保険者である人の病気・けがが5年以内に治り、3級よりやや軽い障害が残った場合は、障害手当金が支給されます。
支給要件
障害給付を受けるには、初診日の前日に、障害基礎年金の保険料納付要件を満たしていることが必要です。保険料納付要件は、初診日の属する月の前々月までに、国民年金の保険料を納めなければならない期間のうち、
イ 滞納した期間が3分の1を超えていない、もしくは
ロ 直近1年間に滞納がない(初診日が平成28年3月31日以前で、初診日が65歳未満の場合)ことです。
年金額
障害厚生年金の額は、障害の程度に応じて、以下のように報酬比例の年金額に一定の率をかけた額で、65歳未満の配偶者がいるときは配偶者加給年金額が加算され、障害基礎年金には子の加算額が加算されます。
【1級障害の場合】
報酬比例の年金額×1.25+配偶者加給年金額+障害基礎年金2級×1.25+子の加算額
【2級障害の場合】
報酬比例の年金額+配偶者加給年金額+障害基礎年金2級(795,000円)+子の加算額
【3級障害の場合】
報酬比例の年金額
【3級より軽い場合(障害手当金:一時金)】
報酬比例の年金額×2.0
※なお、配偶者加給年金額および子の加算額は下記のとおりです。
配偶者加給年金額:228,700円 子の加算額:1人目・2人目各228,700円、3人目以降の子:各76,200円
遺族厚生年金
遺族厚生年金は、厚生年金保険の被保険者または被保険者であった者が死亡した場合に、その遺族に支給されます。国民年金の遺族基礎年金の受給権者には上乗せ給付として支給し、遺族基礎年金の受給権を有しない者には遺族厚生年金が単独で支給されます。
支給要件
遺族厚生年金は、次の場合に、その遺族に支給されます。
イ 厚生年金保険の被保険者が死亡したとき
ロ 厚生年金の被保険者だった人が、被保険者期間中に初診日のある病気・けががもとで初診日から5年以内に死亡したとき
ハ 1級・2級の障害厚生年金の受給者が死亡したとき
ニ 老齢厚生年金の受給者か受給資格期間を満たした人が死亡したとき
上記イ、ロの場合に遺族厚生年金を受けるには、死亡した人が死亡した日の前日に、遺族基礎年金の保険料納付要件を満たしていることが必要です。
保険料納付要件は、死亡した日の属する月の前々月までについて、障害基礎年金の場合(「初診日」を「死亡日」と読み替え)と同様です。
遺族厚生年金を受けられる遺族の範囲
死亡した人に生計を維持されていた①子のある妻または子、②子のない妻、③55歳以上の夫・父母・祖父母(ただし、支給開始は60歳から)④孫です。
子と孫は、18歳到達年度の末日までの人、または20歳未満の1・2級の障害のある人をいい、現に結婚していない場合に限られます。
なお、①の遺族は、遺族基礎年金も受けられます。
年金額
遺族厚生年金の年金額は、死亡した人の報酬比例の年金額の4分の3に相当する額です。子のない妻が受ける遺族厚生年金には、40歳から65歳の間、中高齢の加算が行われます。
【子のある妻が受ける場合】
報酬比例の年金額×3/4 + 遺族基礎年金(795,000円) + 子の加算額
【子が受ける場合(2人以上のときは、人数で割った額)】
報酬比例の年金額×3/4 + 遺族基礎年金(795,000円) + 2人目以降の子の加算額
【子のない中高齢の妻が受ける場合】
報酬比例の年金額×3/4 + 中高齢の加算(遺族基礎年金×3/4)
【子のない妻・その他の遺族が受ける場合(2人以上のときは、人数で割った額)】
報酬比例の年金額×3/4
※子の加算額は、障害基礎年金の子の加算額と同額です。
当該コンテンツは、「キリン社会保険労務士事務所」の分析・調査に基づき作成されております。