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給与計算
従業員を雇用し給与を支給するときには、給与計算という事務作業をしなければなりません。給与計算は、雇用契約や就業規則等に基づき決定された支給額から、税金(所得税、住民税)や労働・社会保険料(雇用保険料、健康保険料、厚生年金保険料)等を控除して差引支給額を確定する事務作業をいいます。
給与計算事務の流れ
(1)年間スケジュール
給与計算に係る事務は毎月の給与計算の他に、労働保険(労災保険、雇用保険)の年度更新事務や社会保険(健康保険、介護保険、厚生年金保険)の算定基礎届、源泉所得税の納付など多岐にわたります。以下の年間スケジュールと労務管理手続きスケジュールで確認してください。
令和4年の労働・社会保険手続き/給与計算の年間スケジュール.pdf
(2)毎月の流れ
毎月の給与計算事務の流れを見てみましょう。毎月やらなければならない給与計算事務は、次の①〜⑥になります。
① 人事情報の収集・確認
人事情報の収集・確認作業は、その月の給与締切日までに行います。具体的には従業員の入社、退社、賃金改定、結婚、出産など、給与計算の基本となる情報を収集し確認することです。
② 労働日数、労働時間数等の集計
給与締切日後に行う作業です。出勤簿やタイムカード等から労働日数や労働時間数、時間外労働の時間数、欠勤、遅刻、早退、等の労働時間の集計を行う作業です。
③ 給与計算
①および②、さらに給与計算をするうえで不可欠な労働・社会保険料や源泉所得税を求めるための各種資料を用意し、給与計算を行います。
④ 給与明細書の作成
給与計算を行った後にこの明細を給与支給明細書の各項目に記載します。
⑤ 給与の支給
給与の支払方法は、現金もしくは従業員の指定する銀行口座への振り込みです。④で作成した給与明細書はこのときに従業員に配布します。
⑥ 社会保険料、税金の納付
社会保険料(健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料)は、その月の各従業員の給与から控除した従業員負担分に会社負担分を加え、毎月月末までに納付します。源泉徴収した所得税や住民税は、原則として毎月翌月10日までに税務署および市町村役場へ納付します。
給与計算をするときに用意するもの
給与計算をするうえで必要な情報です。具体的には次の①〜⑥の書類です。
① 「雇用契約書」または「労働条件通知書」
② 給与支払いに関する規定
③ 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
④ 出勤簿またはタイムカード
⑤ 労働・社会保険の料額(率)
⑥ 当該年度の源泉徴収税額表
給与計算の順序
① 総支給額を求める
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② 雇用保険料と社会保険料を求める |
③ 源泉所得税を求める 源泉所得税の額は、「社会保険料等控除後の給与等の金額」と「扶養親族等の数」から求めます。 |
④ 差引支給額を求める 「差引支給額」=「 課税分給与額」-「控除額合計」+「非課税額(非課税通勤手当)」となります。 |
給与明細書
健康保険法、厚生年金保法、労働保険料徴収法(雇用保険)各法により、給与から保険料を控除したときは、計算書を発行することが義務付けられています。具体的には、これらの保険料の控除額を記載した給与明細を発行する必要があるのです。
給与明細書の書式は法律等で義務付けられていませんが、給与に関するトラブルを防止するために、通常、給与の計算の基礎となる出勤日数、残業時間、基本給や各種手当の額等も記載します。
賞与計算
(1)賞与額
賞与を支給する、しないは事業所の自由です。賞与を支給しない事業所もありますし、業績によっては支給しないという事業所も一般的です。支給する場合の支給基準も事業所により様々です。
賞与についても給与と同じように、その扱いを事前に就業規則等で規定しておく必要があります。
(2)控除額の計算
① 雇用保険料
賞与額に雇用保険の従業員負担率を掛けて計算します。
② 健康保険料
賞与額の1,000円未満を切り捨てた額(標準賞与額といいます。)に「各都道府県支部の保険料率一覧」で確認した保険料率を掛けて2で割ります。
③ 介護保険料
賞与額の1,000円未満を切り捨てた額に介護保険の従業員負担率を掛けて計算します。
④ 厚生年金保険料
賞与額の1,000円未満を切り捨てた額に厚生年金保険の従業員負担率を掛けて計算します。
標準賞与額の上限 健康保険(介護保険)・・年間賞与(4月〜翌3月)の累計が540万円が上限 厚生年金保険・・・・・1回あたり150万円が上限 |
⑤所得税
賞与に対する所得税は、「賞与に対する源泉徴収税額の算出表」から「賞与の金額に乗ずべき率」を求め、賞与支給額(社会保険料等控除後の金額)にこの率を掛けて求めます。
(3)支給額
賞与支給額から、上で求めた社会保険料等を控除して求めます。
賞与支給額 = 賞与額 -(雇用保険料+健康保険料(介護保険料)+厚生年金保険料+所得税)
年末調整
給与や賞与を支払うときに、今まで見たように源泉徴収税額表や算出表に基づいて所得税の源泉徴収を行いますが、その源泉徴収した税額の1年間の合計額は、給与の支払いを受ける人の年間の給与総額について納めなければならない税額(年税額)と下に挙げる理由等により通常一致しません。
この不一致を精算するために、1年間の給与総額が確定するその年の最後の給与支払い時に、その年に納めるべき税額を正しく計算し、それまで徴収した税額との過不足を求め、その差額を徴収または還付することが必要になります。年末調整とは、この税額の不一致を精算する業務のことをいいます。
なお、年末調整は、年収が二千万円を超える者は対象外です。
年税額が一致しない主な理由
- 源泉徴収税額表は、年間を通じて毎月の給与の額に変動がないものとして作られている
- 年の中途で扶養親族等に異動があっても、遡って各月の源泉徴収税額を修正しない
- 配偶者控除や生命保険料控除等は、年末調整の際に控除することになっている
年末調整に必要となる書類 各従業員に次の書類の作成を依頼し、年末調整事務を始める前までに回収します。
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年末調整の流れ
年末調整の業務の流れは下図のようになります。
年末調整業務は複雑で様々な約束ごとがありますので、具体的に処理を行う際は、年末に管轄税務署より送付される「年末調整のしかた」(年末調整の手引書)で確認しながら行ってください。
当該コンテンツは、「キリン社会保険労務士事務所」の分析・調査に基づき作成されております。