"地域"と共に。振り返る農園社長の記憶(Vol.6)〜いちご苗の育苗について〜有料会員限定



(埼玉県 『横田農園』 横田 進)

埼玉県吉見町で農園を運営している横田と言います。

いちごは苗半作と言われます。そのなかで育苗で私が留意している点、病気が出る条件などについてお送りしたいと思います。

「いちご苗の育苗について」

・いちご苗は苗半作と言われる位大事で経営に大きく響きます。種苗法違反に注意!登録品種については許可を受けなければいけません、当地域は県の苺組合が許諾を受けているので、この苺組合に入る必要があります。そこで初めて登録品種の栽培ができるようになります。苺組合に入れなければ県で認める苺は作る事ができません。苺組合に入ってから苺苗の注文を出しますが、苺の親苗は注文を受けてから生産をしますので入手できるまで2〜3年の期間が掛かります。この苗が届いてから増殖をして本圃に定植します。こんな手順になります。ホームセンター等で販売している苺苗は、既に登録期間が終わり一般品種となっている苗です。

・いちご苗は、土壌に直接植えて採苗する方法と、プランターに親苗を植えて高設ベンチで採苗する方法があります。最近は後者の手法が多いと思います。理由は病気に感染するリスクが低いのと作業性が良い事です。

・いちご苗で一番恐ろしいのは、炭疽病に感染してしまう事です。7月〜8月にかけて蒸し暑い日が続きますが、ここでいい加減な管理をすると炭疽病に感染します。この病気の怖い所は、9月に定植し成長を始めたあたりから徐々に青枯れのような感じで突然苗が倒れます。今日全て処理して新しい苗を植え替えても次の日にはまた別の苗が 同じ様に倒れます。この状況が12月まで続きます。以下の写真は研修生のハウスで12月の状況です。左側の2列が炭疽病に感染した苗を9月に定植したものですが、右側は健全な苗を植えたものです。ここまでくると植え替えも回復も不可能です。経費は使ってしまっているので、大赤字確定です。

・一方で、実のところ私はこの結果を完全に予想していました。病気が出る条件を満たしていたからです。それでも私がその予想を伝えなかったのには理由があります。Vol.4でも記載しましたが、大失敗を経験し、それを乗り越えることこそが、成功するための勘を身につける方法であり、研修生にはそういう失敗の経験を積んで欲しいと考えているためです。そういう予兆を見つけた際は、替えの苗をこっそり別に育てて置くなど、失敗を乗り越えるためのフォローを行うようにしています。

「病気が出る条件」

病気が出る条件として、以下が挙げられます。

・肥料分が多い
・灌水が雑
・遮光しすぎ(夏だからある程度の遮光は必要であるが。日差しの弱い日はもう少し日を当てた方が良い)
・育苗ハウス内が暑い(サイドだけでなく上まで空けて換気))

これらを踏まえ、病気を防ぎ、苗を育てるには微妙な加減が必要となります。人が「朝・昼・晩」苗の状態を見て、苗場の温度や日差しを五感で感じるということが大事だと思っています。

例えば、苗も人のように蒸し暑いときは換気するようにしたり、寝苦しい夜が続く時は細心の注意が必要であったり。

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