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事業承継の専門家より、失敗しない事業承継のポイントを解説します。
前回のコラムで、事業承継の失敗について触れましたが、今回は、その失敗例のひとつ「後継者がいない」について、事例を踏まえて具体的にお伝えします。
失敗の理由
後継者がいない!
事例
農業法人A社の社長B作さん68歳。昨年体調を悪くして入院したことをきっかけに事業承継を真剣に考えるようになりました。しかし、東京の会社に勤めている息子から、以前、「農業を継ぐ気はない」と言われたことがありました。
その時だけは「どうしたものか・・・」と不安がよぎったB作さんですが、日々の仕事に追われるなか、「事業承継はなんとかなるだろう」とか「自分がいなくなった後のことだしなあ」といった感覚で、積極的に事業承継と向き合う気になれず、結局、自身の入院をきっかけに、ようやく真剣に考え始めるに至りました。
とはいえ、これまで真剣に考えてこなかったB作さんは「事業承継どうするんですか?」と問われても、「後継者もいないし、どうしようもないよ。もう体もきついし、事業売却とか増えているみたいだから考えてみようかな」という回答です。
結局、事業承継の時期が迫ってきても、承継の話が「具体的」に進まずに、時間だけが過ぎてしまっています。
対策・解説
このままだとどうなるでしょうか?おそらく、ギリギリのタイミングでどうするかを判断してしまい、急遽従業員に承継するのか、事業譲渡をするのか、だれも継ぐ人がおらず廃業となるか・・・、判断を迫られることになってしまいます。
急遽従業員が継ぐことになっても、後継者として覚悟を持つ時間を持てず、経営を学ぶ時間など準備する時間がなく継いでしまい、継いだ後で後悔することになってしまうかもしれません。
また、事業譲渡もギリギリで決めると、事業を磨き上げて価値を高める時間がなく、あまりよくない条件で譲渡することになってしまうかもしれません。さらには、それすらも叶わず、結局廃業せざるを得ない状況になってしまうかもしれません。
何が問題だったのでしょうか。そうです。事業承継と向き合わず、事業承継の準備を一切していなかったことが問題なのです。後継者はいたのです。探していないし、任せていなかったのかもしれません。
私は、後継者も含めた承継先の選択は、以下の5つの承継をゼロベースで考えて選択肢を複数用意しておくべきだと考えています。
- 息子・娘への承継
- 親族への承継
- 従業員への承継
- 第三者への承継
- 社会への承継
承継先、後継者を決める前は、複数の選択肢があった方がよいと思います。事業承継はただでさえ多くの人の人生が大きくかかわる時であり、何が起こるかわからないからです。
選択肢は多すぎるのも決められなくなるので好ましくありませんが、選択肢ゼロはもっと好ましくありません。
後継者など承継先は、会社にとって最良の選択をするために、まずはしがらみを排除したゼロベースで検討し、確定するまでは複数の選択肢をもっておいて、タイミングを見て選択肢の中から最適な後継者を決めるとよいと思います。
次回のコラムも、失敗理由について少し具体的に掘り下げていきます。テーマは、事業承継のキーマンについてです。
最後まで、お読みいただきありがとうございます。次回のコラムもよろしくお願い致します。
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