一般社団法人 全国農業会議所
新規就農相談センター相談員
門脇 圓治
前回、述べましたように、独立・自営就農を目指す場合、「どこで(就農地)」、「何を(経営作目)」、「どのような方法(農法)で」栽培するかを決めることが求められます。
今回は、非農家出身者にとって悩ましい「就農地の選び方」について、日頃の相談体験に基づき触れたいと思います。
栽培作目を固めて、その作目の全国的な主産地で就農するのが基本
非農家出身者の場合、農家出身者と違い、就農する地域や作目は自由に決められる訳ですが、逆に「どう決めたらいいのかわからない」との相談も多いです。
その際、ヒントとして「①就農する作目を検討する中で就農する地域を固める、②暮らしたい地域の中から選択する」と助言させていただいています。
①「栽培する作目」を中心に「就農する地域」を決める
例えば、前者の場合、トマトに固まったとすると、全国のトマトの主産地の中から就農地域を考えていくことになります。具体的には、熊本県や北海道、茨城県、愛知県、千葉県といったところです。なお、有機農業(農法)に関心が高い相談者については、その地域全体の農家が有機農業に積極的に取り組んでいる拠点地域を紹介しています。
②「就農する地域」を中心に「栽培する作目」を決める
後者については、新規就農の場所は農業生産と同時に生活の場にもなる訳ですから暮らし面にポイントを置いて就農地域を検討するということです。都会生活が嫌になって地方での田舎暮らしを希望される方も多くおられますが、都会生活の便利さも捨てがたく、東京から近い、千葉県、神奈川県、埼玉県での就農をご希望の方も多く見受けられます。
また、冬場に積雪が多い日本海側ではなく、少ない太平洋側を、さらに温暖な西日本地区を求められる方もおられます。その他、地震の少ない地域を希望される方もおります。
いずれにしましても、「就農する地域」と「栽培作目」については相互に関係する重要事項であり、「栽培する作目」を中心に「就農する地域」を決めるか、「就農する地域」を中心に「栽培する作目」を決めるかということです。
この2つの項目を何度も行き来して、農業体験や情報収集による十分な検討を重ねることにより、将来に悔いの残らない決定をしたいものです。
選択の理由は、農地確保のしやすさや研修先、充実した受け入れ支援策
ところで、全国新規就農相談センターが2016年度にまとめた『新規就農者の就農実態に関する調査結果』によれば、就農地の選択理由(3つまで回答)をみると、前回(2013年)、前々回(2010年)の調査結果と同じように、「取得できる農地があった」が最も多く(表参照)、農地取得の可否が就農地の選択に最も大きく影響していることが明確です。
第2位は「就業先・研修先があった」であり、前回、前々回の第5位より順位を上げてきていることから、研修先の比重が高まっていることが分かります。
また、第3位の「行政等の受け入れ・支援対策が整っていた」と合わせ、研修や就農支援体制が充実している地域を重要視していることが明らかです。
一方で、「自然環境がよい」は24.6%もあるが、年々、その割合は低下傾向にあるようです。
次回は、自治体やJAグループによる新規就農受け入れ支援策について、紹介します。
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