(ニュージーランド大使館商務部/ニュージーランド貿易経済促進庁)
③ 農場管理:ニュージーランド アグリテックの農場管理ソフトウェア
ニュージーランドはその基幹産業である農業の生産性を、アグリテックという新たなテクノロジーを起点とする営農活動の抜本的な刷新(イノベーション)により高めてきました。
小さいながらもバラエティに富んだ地形・環境を有す国土は、多種多様かつ豊かな農産物の生産を可能にする一方で、農業従事者に様々な課題を突き付け、ニュージーランド アグリテックは、農業従事者と共に、それら課題を乗り越える度に進化してきた、ともいえます。
加えて、農業輸出国として、消費者嗜好や人口構造の変化、気候変動など、経済発展と共にダイナミックに変化し続ける世界の農業市場に対応していく中、農産品と共にアグリテックの質も磨かれ、更にはアグリテック単体として輸出されるようになり、各国で高い評価を得るに至りました。
本稿では、進化を続けるニュージーランド アグリテックの中から、特に農場運営に関するデータを管理・分析し、意思決定や業務効率化を支援するソフトウェアを提供する企業をご紹介します。
データ・ドリブンの農場経営の浸透
ニュージーランドでは、少ない人数で広大な農場の運営を可能にするため、農場運営管理業務に特化した業務効率化を実現する様々なソフトウェアが開発され、導入されています。
大量の農業生産物データを記録し、生産量や売上の予測・分析を可能にするソフトウェアや、地理情報マッピングシステムを活用した家畜・農作物の状態確認・飼育計画策定支援を行うソフトウェア、会計管理やビジネス管理、さらには労働者の生産性管理を一括管理するアプリケーション等、多種多様なソフトウェアが開発・運用されており、農場の運営状況をリアルタイムで可視化して意思決定・業務効率化を行う「データ起点」の農業経営が浸透しています。
FarmIQ(ファームアイキュー)
(画像:FarmIQ, NZ AgTechStory より引用)
地理情報マッピングシステムを活用した農作物生産における、生産管理・業務管理を一つに集約した業務効率化ソフトウェアを開発しています。
例えば、アプリを通してスマートフォンで家畜や農作物の状態確認、飼育計画と予算管理、市場動向確認などを可能にするサービスを提供しています。現在、3,500戸以上の農家に導入され、従業員との日々の情報共有ツールとしても利用されています。
Figured(フィギュアード)
(画像:Figured, NZ AgTechStory より引用)
酪農業や農業を行う農家向けに、いつでも利用できるクラウド上の経理ソフトを提供しています。農家の生産高や取引額を管理し、キャッシュフロー予測やバランスシートなどを簡単に作成・確認することができます。
Dataphyll(データフィル)
(画像:Dataphyllウェブサイト)
園芸業に特化した業務管理・効率化を図るサービスを提供しています。例えば、従業員の出勤管理や業務割り振り、業績評価、さらに、リアルタイムでの果物の品質管理とレポーティングなど、様々な業務の見える化を行うことが可能です。
Hectre(ヘクティア)
(画像:Hectreウェブサイト)
果樹園運営に特化した生産性向上や業務効率化を実現するソフトウェアを開発しています。収穫管理のための果実につけるスキャン用タグやGPSによる果樹の本数の自動計測、さらに、勤務データの管理やそれによる給与計算などを簡易に行うことができるサービスを提供しています。
このように、ニュージーランドでは農場運営に重要なあらゆるデータを農業に特化して開発された専用のソフトウェアで管理し、蓄積されたデータを分析して農場運営及び農業ビジネス運営における意思決定を行っています。
日本においても、ソフトウェアを活用しデータ管理を一元化することで、データに基づいた農業運営が実現され、適切な意思決定・効果的な生産性向上が期待できるのではないでしょうか。
次回は、「④園芸・施設栽培:ニュージーランド アグリテックの領域特化型ソリューション」と題し、園芸・施設栽培に特化した管理作業の効率化や環境整備の改善を促すソフトウェアやセンサー、農作業の機械化などの技術・ソリューション等ご紹介します。
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