(ニュージーランド大使館商務部/ニュージーランド貿易経済促進庁)
④ 園芸・施設栽培:ニュージーランド アグリテックの領域特化型ソリューション
ニュージーランドはその基幹産業である農業の生産性を、アグリテックという新たなテクノロジーを起点とする営農活動の抜本的な刷新(イノベーション)により高めてきました。
小さいながらもバラエティに富んだ地形・環境を有す国土は、多種多様かつ豊かな農産物の生産を可能にする一方で、農業従事者に様々な課題を突き付け、ニュージーランド アグリテックは、農業従事者と共に、それら課題を乗り越える度に進化してきた、ともいえます。
加えて、農業輸出国として、消費者嗜好や人口構造の変化、気候変動など、経済発展と共にダイナミックに変化し続ける世界の農業市場に対応していく中、農産品と共にアグリテックの質も磨かれ、更にはアグリテック単体として輸出されるようになり、各国で高い評価を得るに至りました。
本稿では、進化を続けるニュージーランド アグリテックの中から、特に園芸・施設栽培における施設内環境を計測するセンサーや業務効率化ソフトウェア、農作業の機械化技術など、「園芸・施設栽培」に貢献するソリューションを提供する企業をご紹介します。
園芸・施設栽培に特化したソリューションの開発
施設栽培では、農作物の成長と生産性に大きく影響を与える施設環境を正確に把握し生育に適した環境を整備・維持し続けることが重要です。また、慢性的な人手不足の状況下で施設栽培を運営していくために、施設内での作業を機械化し、生産性向上することも課題です。
ニュージーランドでは、園芸や施設栽培に特化した様々なソリューション(施設環境を把握するセンサーや把握した情報を管理するソフトウェア、施設栽培向け小型トラックや自動野菜収穫機)が開発され、農産物の質及び生産性の向上と業務効率化が実現されています。
Autogrow(オートグロウ)
(画像:Autogrow, NZ AgTechStory より引用)
IoTセンサー技術やAIを活用した施設栽培の管理・業務効率化をサポートする技術を開発しています。
具体的には、ワイヤレススマートセンサーによる温度、湿度、明るさ、栄養、空気など様々なデータの見える化を行うソリューションを提供しています。既に、40カ国、100種類以上の異なる農作物を生産する農家に使用されています。
Bluelab(ブルーラボ)
(画像:Bluelab, NZ AgTechStory より引用)
商業用園芸農家向けに水素イオン濃度を計測する機器を提供しています。
特に、据え置き型の機器は、携帯アプリと連動してリアルタイムでその濃度を確認することができ、常時モニタリングを可能にしています。世界中で使用される優れたBluelabの計測器はNew Zealand International Business Awards を2019年に受賞しています。
FTEK(エフテック)
(画像:FTEKウェブサイト, ‘TEKSpray’)
農園でのスプレー散布や収穫作業用に使用できる、安全性と操作性に優れた小型トラックを開発しています。
収穫用・スプレー用の小型トラックはどちらも背が高く、特に、収穫用トラックは収穫物の種類や大きさによって収穫用のかごの配置を自由に変えることができる機能を備えており、1台で多様な農作物の収穫作業に対応することが可能です。
Harvester Concepts(ハーベスターコンセプツ)
(画像:Harvester Conceptsウェブサイト, ‘HT-Tom’)
高さの異なる野菜等グリーンリーフに合わせた様々な種類の収穫用機械を開発しています。
例えば、サラダ野菜など背の低い野菜収穫機、やや高さのある野菜向け収穫機、ローズマリーやラベンダーなど低木用の収穫機を提供しています。
ニュージーランドではこのように、園芸・施設栽培に特化した施設環境の整備・管理サポートのソリューションや、スプレー散布・収穫などにおける作業の省略化・効率化などのソリューションが導入され、生産性向上や業務効率化が進められています。
日本でも園芸・施設栽培の作柄は特に高付加価値で取引されています。更なる生産性向上のために、ニュージーランドのアグリテックへの投資を検討する余地も十分あるのではないでしょうか。
次回は、「⑤バリューチェーン最適化:収穫・選別・輸送・保存まで、一気通貫のバリューチェーン・ソリューション」と題し、農作物収穫後の洗浄や粗選、梱包などの必要な処理を最適化するバリューチェーンの技術・ソリューション等ご紹介します。
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