(エフピコチューパ株式会社 上原 英一)
アグリウェブ読者の皆様、こんにちは。
青果物用トレーや袋と言った出荷資材の製造販売を手掛け、農産業界に携わらせて頂いているエフピコチューパ株式会社と申します。
4回目の今回も前回に引き続き、環境問題に配慮した農産パック・包装について書かせて頂きます。
表面のコメントにだけ耳を傾けてはいけない
前回のおさらいにもなりますが、3R推進の際に着目すべき点として、根拠に元づく効果を重視することをお伝えしました。何と比較して何がどれだけどうなるのか。また、根拠数字の算出方法に疑問点はないか。これが一番大事なことです。
その次に大事なことがフレーズです。「環境に優しい」「地球に優しい」「グリーンな社会」などの表記を付け ”耳心地の良いフレーズ“ に乗せられないことにも注意が必要です。
「地球に優しい」の判断要素「CO2排出量削減」
ほとんどの製品やサービスにおいて、環境対応にそぐった一面を持たせることは、割と簡単に出来ます。どんな製品やサービスにおいても一長一短あることが多いですが、長所を前面に押し出し(ここで言う環境面)、短所の部分を見えにくくすれば、さほど効果のない環境対応の出来上がりです。
さらにダメ押しの「地球に優しいエコ!」をキャッチフレーズに加え、世に出回ることになります。もっと分かり易い具体例を後に記載します。
表面的な部分だけを見ると中々判断が困難ですね。先に記した着目すべき点をよく確認することが回避策ですが、より判断しやすい要素の一つが「CO2排出量削減」です。
前回、プラスチック容器・包装に関わる環境の問題は、大きく4つとお伝えしましたが、更に分かり易くするために、3Rの推進と申し上げました。プラスチックの量を減らす(リデュース)ことにおいて、我が国のプラスチック資源循環戦略では2030年までにワンウェイプラスチックを25%排出抑制するとあります。
25%って以外と小さく感じられる方もいらっしゃるかもしれません。当たり前の話ですが、プラスチック容器・包装を使用されている方々は、使用する理由があって使用しています。鮮度保持や流通面などで必要不可欠な場合もあり、全て無くすことは困難です。そのために同時並行して「リユース」と「リサイクル」がある訳です。
知識がないと判断しづらい「エコ」
冒頭にも記しましたが、表面のコメントにだけ耳を傾けてはいけません。
バイオマスプラスチックの例
一つの具体例として「バイオマスプラスチック」を説明します(下図参照)。ネーミングからして環境に良さそうですよね。ですが“耳心地の良いフレーズ”になっている可能性もあります。
バイオマスとは、生物資源(bio)の量(mass)を表す概念で、原料として植物などの再生可能な有機資源を使用するプラスチック素材です。プラスチック資源循環戦略でも再生可能資源として紙同様に推進しており、2030年までに200万トン導入を目標にしています。
当社でも製造・販売を行っており、期待されている素材です。何も問題がなさそうに思えますが、表面のコメントだけで行き届いていない点は、製品(容器・フィルム)になった際の使用量です。
表面のコメントにだけ耳を傾けてはいけない理由
「バイオマスプラスチック使用」と記載された製品にどれだけのバイオマスプラスチックが使用されていると思いますか?
100%バイオマスプラスチックで作られた製品だと思われる方もいるでしょう。PLA素材など実際に100%使用している製品もあります。しかしバイオマスプラスチックが1〜2%しか使われていない製品もたくさんあることはご存じでしょうか。1%とは99%が通常のプラスチックと言うことです。
これならば通常のプラスチック量を10%削減した軽量化製品の方がはるかに良いことは言わずもがなです。バイオ度(バイオマスプラスチックの割合)の高い製品と低い製品を同様の扱いで認識されている方は多く、更にバイオ度の低い製品は導入時のコストも割と手頃なこともあり拍車をかけています。
バイオ度を確認することは一つの指標になりますが、リサイクル製品などと環境への貢献度を比較する際は中々困難です。そこで役に立つキーワードが「CO2排出量削減」です。
SDGsにも環境面にも精通出来る指標
「CO2排出量削減」がキーワードと申してから、かなり引っ張りましたがやっと記載します。
プラスチック問題から取られる行動は色々ありますが、3Rを筆頭に脱プラスチックや再生可能資源の活用やリサイクルの推進。これらは石化由来材料の置き換えや再生材の活用を行っておりますが、同時にCO2排出量削減にも寄与することがほとんどです。
また環境・脱炭素社会と一括りにされることもしばしばです。CO2排出量削減の割合と数量を対環境面への取り組みに対する目安にすることは大変に有効です。
CO2排出量のLCA(ライフサイクルアセスメント)
CO2排出量は、原料から製品製造・廃棄(償却)までの全てのプロセスで使用するエネルギーをCO2換算するLCA(ライフサイクルアセスメント)という考え方があり、具体的数値化をされる事が多いです。
まだ全ての製品に対しLCAが数値化されている訳ではありませんが、基準が曖昧なものや独自素材でしかない表せない数値よりも、CO2排出量は比較の活用が出来きるため、非常に有効性が高いです。
菅首相が「国際公約」“温室効果ガス 2050年までに排出ゼロ”目標を表明したことも記憶に新しいところですが、環境に対する様々な目標や指標がある中で、CO2排出量削減は、その中でも最優先される目標の一つです。
今後、環境対応を考えた容器・包装を選定される際は是非とも参考にしてみてください。一つの基準を持つことで、他の要素についても知識と正確な選球眼が肉付けされていくことと思います。
環境についてはまたお話する機会もあると思いますが、次回は「トレンドから見る容器・包装の選定ヒント」をお話したいと思います。出荷資材を選ばれる際に是非参考にしてください。当たり前のようであまり実践されていない、他との差別化できる内容になります。
シリーズ『トレー・包装のチカラ〜消費者が求める付加価値を掴む〜』のその他のコラムはこちら
当該コンテンツは、担当コンサルタントの分析・調査に基づき作成されています。
公開日