(気象予報士 寺本卓也)
明けましておめでとうございます。農てんき予報士の寺本です。
平日は福島のテレビ局で天気予報を、週末は市民農園で農作業を、そんな天気と農業の「2刀流」を目指しているのが「農てんき予報士寺本」です。
ちなみに私は野球部を1か月で辞めました。ものすごく下手だったんですね。野球は下手でも、日本の農業を盛り上げるべく今年も福島から楽しく、そして皆さんに役立つ情報を全力で発信して参ります。どうぞ今回も最後までお付き合いください。
今季はドカ雪、まだまだありそう
年末年始と強烈な寒波が立て続けに流れ込み、日本海側を中心に大雪や猛吹雪に見舞われました。今季の冬はドカッと一気に大雪となる降り方で、このようなタイプの寒波の襲来はまだまだこの先もありそうです。
最新の1か月予報によると北・東日本の日本海側を中心に雪の量が平年より多くなりそうな予想となっています。
今年の夏はふつうの暑さか?
さて、今回は年明け1発目のコラムということで折角ですから、今年の夏の天気を予想してみようと思います。結論からいうと、「ふつうの暑さに落ち着くかも。」と少し期待しています。というのも、理由があります。
気象庁はラニーニャ現象が、今年の春には80%の確率で終わりを迎えそうと発表しているためです (昨年12月10日時点)。この発表内容から気象予報士として読み取れる事は、「猛暑になる要素が一つ減った。」という点です。
夏のラニーニャ現象は猛暑に
前回、冬にラニーニャ現象が発生していると、なぜ日本がめちゃくちゃ寒くなりやすいのかという仕組みをお伝えしました。今回はそのラニーニャ現象が夏まで続いた場合どうなるかをイラストから分かりやすくお話します。
【イラスト①】太平洋の熱帯域で、いつもの年より東風が強い状況
【イラスト②】強い東風により暖かい海水が、いつもより西に蓄積
【イラスト③】インドネシア付近で海面水温が高くなり、積乱雲が大量に発生。積乱雲が発達する事で上昇した空気が、北の海上へむかってどんどん下降。
【イラスト④】夏の太平洋高気圧がいつもより勢力が増して猛暑に。
そもそもなぜ夏の太平洋高気圧が強まると猛暑なのか?簡単に言うと、空気は圧力がかかると暖かくなる性質があります。
圧力鍋をイメージしてください。あれは意図的にお鍋の中の空気に圧力を加えることで、熱くさせています。
ラニーニャ現象が発生すると、太平洋高気圧の勢力が増す可能性があります。それは、日本付近がいわば圧力鍋で熱せられているようなイメージです。
今年も猛暑の可能性は高い
話を本題に戻します。気象庁は今年の春にはラニーニャ現象が終わる可能性が高いとしています。という事は、日本付近は上記のような圧力鍋で熱せられるような状況とはなりにくく、今年の夏はふつうの暑さかなという所で落ち着くかもしれません。
とは言え、近年は温暖化の影響で、そもそもそのふつうの暑さのレベルが上がってきています。
東京の猛暑日日数(35℃以上)を見てみると、年々増加傾向です。結局、今年も暑さには油断できませんね。
農てんきアイテム「紫外線ランプ」に見る植物の歴史
私は先日、福島県鏡石町でいちごを栽培している、「鏡石農遊園」を取材しました。
こちらでは、福島県のオリジナル品種、「ふくはる香」を作っています。特徴はいちごなのに、桃のような芳醇な匂いがする事と、すっきりした味わいが特徴です。その美味しさから、都内の有名パーラーのパフェに使用される程です。私もあまりの美味しさに、図々しく何個も頂いてしまいました。
ちなみにこちらのいちごは、鏡石農遊園インスタグラムのダイレクトメールなどから購入ができ、全国へ発送する事が可能です。
そんなこちらの農園で、ある驚くべき物を発見しました。それは「UVランプ(紫外線蛍光灯)」。天気の知識を利用した最新機器で、まさに「農てんきアイテム」です。
どんな物かというと、地上に降り注ぐ紫外線より、さらに強めの波長の紫外線(UV-B)をいちごに当てる事で、体内で病気に耐えるたんぱく質を合成し免疫力が活性化され病気に強くなるという仕組みです。さらにはハダニなどの病害虫をこのUVランプで殺すことも可能にしています。
ただ、注意が必要です。照射のし過ぎや、照射位置が近すぎると「葉が焼ける」症状が起きる可能性があります。
いくら植物が光合成をするからと言っても、強い紫外線を浴び続けて平気な訳ではないのです。なんたって、人体にとって日焼けや、皮膚がんの原因になるくらいですから。
紫外線は生物を破壊する
またも少し話が脱線しますが、ここでクイズです。
気象予報士試験でまず始めに勉強する事ってなんだと思いますか?雨?それとも雲?などと思うかもしれません。
答えは「太陽」です。太陽があるからこそ、昼と夜があり、天気も気温も変わるのです。太陽が放つ光線から天気は始まるのです。
また、気象予報士のバイブルとして有名な「一般気象学」という本の始めの章で、「紫外線は生物を破壊し、細胞の増殖を不可能にする。」という事も学びます。強力な紫外線はそれほど当たったらヤバい光線なのです。
しかしながら、現在は紫外線を浴びても人が即死する事はありません。それは長い時間をかけて植物達が、紫外線を弱くさせてきたからなんです。
地球の歴史、植物達は生き抜くため紫外線を減らした
上の図は昔と今の「地球と植物の歴史」を簡単にイメージしたものです。太陽から放たれる紫外線が深海を進みます。そこに藻達がなんとか耐えられる紫外線で光合成を行うことで、徐々に酸素を増やしオゾン層を作りました。
オゾン層はどんどん上空に広がり、地上の紫外線量を減らしていったのです。そして地上に植物が生息し始め、生物も生まれていく訳です。ですから、強力な紫外線をずっと浴びる事は植物も耐えられないのです。
SDGsな農業が加速する一年に
日本農業は、長らく深刻な後継者不足が続いています。しかしながら、今回の取材を通して、スマート農業の発展とともに、それを駆使した新たな若い人材が活躍している事に私は希望も感じました。
日本の農業の明るい未来を目指して、私も「農てんき予報」で盛り上げていこうと思います。今年も何卒「農てんき予報」コラムをよろしくお願い致します。
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