(株式会社ふるさと支援研究所 清水 進矢)
前回は、事業承継補助金の活用プロセスについて実例を交えて詳しく解説しました。補助金を活用することで、経営の刷新や新たなステージへの進化が可能であることをご理解いただけたかと思います。
今回は、補助金交付を受けたその後の経営体制の構築と、マーケティング支援の重要性について、具体的な実例をもとに詳しく見ていきます。
マーケティング支援による成功例:新たな販路開拓とブランド力の向上
いちごを育てるD農園は、これまで主にJAへの出荷をメインとした経営を行っていました。しかし、コロナ禍を経て市場のニーズは多様化、経営の安定性に課題を感じていました。そこで、ブランディングに力を入れ、新たな販路での販売を決断しました。
まずは、販路開拓を支援する持続化補助金を活用し品質を保持しながら保管できる冷蔵庫の導入や商品をPRするパンフレットを制作しました。(持続化補助金については第一回コラムをご参照ください)
冷蔵庫導入により保管可能量が800kgから2,000kgに増加できたため、栽培計画を見直し、直売所での販売量増加が実現しました。パンフレットは農業系デザイン実績が豊富な弊社デザイナーが担当。デザイン性の高いパンフレット制作・配布によりブランド力が強化され、認知度が向上しました。
〈制作したパンフレット〉
その後、ドライいちごや冷凍いちごなどの新商品を次々と開発し、補助金を活用した設備導入と宣伝活動によって着実に販路を拡大。
経営の安定化を進める一方、商品の強みを再発見し、消費者に効果的に伝えるためのブランド戦略を構築、デザインに反映させるなど、ブランディング強化の側面からマーケティング支援も継続して行いました。
その結果、ふるさと納税の返礼品として全国からの注文が急増。新たにスーパーとの取引も始まり、地域の消費者からの支持も得ることができました。補助金活用とマーケティング支援により、販路拡大、売上の安定化とブランド力の向上を同時に達成することができました。
〈制作したパッケージデザイン、チラシ〉
マーケティング支援の重要性
補助金を活用して設備投資や新規事業を始めることは大きな一歩ですが、その後のマーケティング戦略がなければ、思うような成果は得られません。
D農園のようにマーケティング活動を強化することで、新たな顧客層を開拓し、事業の成長につなげることができます。
マーケティング戦略を練る際のポイント
マーケティング戦略を練る際、誰に何を売れば課題解決できるのか現状の課題を整理する必要があります。D農園では以下のように整理していきました。
課題:JA出荷がメインで経営が不安定
理想:JA以外にも販路を増やしたい、売上を伸ばしたい、農園のファンを増やしたい
解決案:直販強化する、そのために在庫や商品数を増やす、宣伝広告する
経営者自身が感じる課題と、客観的かつ専門的な目線からの課題は異なります。適切に整理し、どんな施策を打つべきか、ここできちんと明確化しておくことでマーケティング戦略も具体的かつ現実的なものになります。
課題整理できたら、市場ニーズに合致したターゲットや課題解決できる商品、訴求方法を考えていきます。
D農園では、直販事業をアピールするためターゲットをコロナ禍で遠出を控えている近隣住民と広く設定。このとき、もっとも重要なのは農作物の特徴や想い・こだわりがきちんとターゲットに届けられること。どんなに良い商品でも、こだわりを言語化・視覚化してお客様に伝わらなければ選ばれません。
そのためには市場ニーズとターゲットの特徴を把握し、デザインに反映させる必要があります。
ターゲットのニーズを捉え、特徴や想いをデザインに反映
D農園では、これらを反映したデザインで、こだわりをわかりやすく訴求するパンフレットを配布し、課題解決の足掛かりとしました。このように、課題から整理して誰に何を売るかを戦略化することが成功への近道です。
ほかに、マーケティング支援の主な取り組みは以下のとおりです。
ブランドコンセプトの明確化:自社の強みや商品の特徴を整理し、消費者に響くデザインや写真などビジュアル面を強化。
販路の多様化:オンライン販売、ふるさと納税、直売所、スーパーなど、多角的な販売チャネルの開拓とそのサポート。
プロモーション活動:SNSやホームページを活用した情報発信、イベント案内、イベント参加時の販促品制作など。
専門家との連携で効果的な戦略をマーケティング戦略を立てるときは、第三者の目線を入れるとうまくいきます。社内では「あたりまえ」に感じていることが、他の人が見たら魅力的なことで知りたい情報だった、ということはよくあります。
マーケティングの専門家やコンサルタントと連携することで、より効果的な戦略を策定しましょう。補助金の中には、こうした専門家の支援を受ける費用も対象となるものもあります。
まとめ:補助金活用後も継続的な経営改善を
大事なのは補助金をもらうことではなく、補助金を活用して継続的な経営改善を続けることです。マーケティング強化や消費者ニーズに応える商品開発や販路拡大を進めることで、事業の持続的な成長が可能になります。
補助金はあくまで手段であり、その後の取り組みが成功の鍵を握ります。必要に応じて専門家のサポートを受けながら、長期的な視点で計画的に取り組んでいきましょう。
専門家選びの際は、お近くの商工会・商工会議所に相談したり、「経営アシストチャット」を活用することで、信頼性の高い専門家に出会えます。
シリーズ『農業経営に活用できる補助金』。次回は、専門家に相談する前に経営体として整理・準備すべきことについて解説していきます。
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