更新日
新規就農(個人が農業参入する場合)
(1) 農地法の許可を受ける方法
農地法に基づき農地の権利(所有権、地上権、永小作権、使用貸借による権利、賃借権など)を取得する場合には、農業委員会の許可を受けなければなりません。この許可がない売買・貸借等の契約は効力を生じません。
農地の受け手が次のすべての要件を満たす場合には、許可の対象となります。
<農地を取得するための要件>
① 農地のすべてを効率的に利用すること(機械、労働力、技術等を適切に利用するための営農計画を持っていること)
② 必要な農作業に常時従事すること(農地の取得者が必要な農作業に常時(原則年間150日以上)従事すること)
③ 一定の面積を経営すること(農地取得後の農地面積の合計が、下限面積原則50a(北海道は2ha)以上であること。)※1 ※2
※1 この面積(下限面積)は、地域の実情に応じて農業委員会が引き下げることが可能となっています。農林水産省調べ(令和3年7月14日現在)によると、全国の約7割(1,248市町村)の市町村において地域の実情に応じて別段面積が定められています。新規参入を検討中の地域の面積については、当該市町村農業委員会にご照会ください。
※2 この下限面積に係る規定は、2022年5月に成立した農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律による農地法改正により廃止されました(基盤法等改正法の施行期日は、政令(現在:未制定)で定める日(令和5年4月1日予定)となっています。)
④ 周辺の農地利用に支障を与えない利用方法であること
なお、農地の賃借権・使用貸借権が設定される場合で、上記②の要件に該当しない場合であっても、次に掲げるすべての要件を満たすときは、例外的に許可の対象となります。
ア 取得後、農地を適正に利用しない場合に使用貸借又は賃借権を解除する旨の条件が契約書に付されていること
イ 地域の農業者との適切な役割分担の下に継続的かつ安定的に農業経営を行うと見込まれること
<農業委員会への許可申請>
申請は、原則、貸主(売主)との共同申請が基本となるため、事前に貸主(売主)との協議を進めておく必要があります。許可申請書、必要な添付書類のほかに、営農計画書等の提出を求められることが多いです。
農業委員会による許可は、これらの書類等に基づき確認、判断されます。関係書類では、特に、「すべての農地を効率的に利用すること」及び「必要な農作業の常時従事者であること」、例外的許可にあっては追加要件を、クリアしていることを具体的に明らかにする必要があります。
(2) 経営基盤法に基づく「農用地利用集積計画」により権利を取得する方法(農地制度の概要 2の(注)を参照のこと)
経営基盤法に基づき、市町村が農地の貸し手と借り手の貸借等を集団的に行うため、個々の権利移動を一つの計画にまとめた農用地利用集積計画を作成・公告するもので、計画の定めるところにより、一挙に利用権設定等の効果が生じます。この場合、農地法の許可は要しません。
<農用地利用集積計画の要件>
① 計画の内容が市町村基本構想に適合すること
② 利用権の設定等を受ける者の要件 ※
ア 農用地のすべてを効率的に利用すること
イ 農作業に常時従事すること
ウ イの要件に該当しないと認められる者(解除条件付きで利用権の設定を受ける者)に係る要件。
上記アのほか次の要件を満たすこと
・地域の農業者との適切な役割分担の下に継続かつ安定的に農業経営を行うと見込まれること
③利用権の設定等をする土地について、原則権利関係者すべての同意を得ていること
※農地法に規定する下限面積要件は適用されていないので、下限面積を満たす必要はありません。
<利用権設定等の申し出>
農用地利用集積計画により農地の権利を取得するには、先ず、当事者が市町村に利用権設定等申出書、営農計画書(新規就農者の場合)等の書類を提出する必要があります。※農用地利用集積計画の作成は、市町村の判断に委ねられ、当事者に農用地利用集積計画の作成を請求する権利は与えられていません。計画作成の可否は市町村が行います。
審査では、前述の基本構想に適合しているかどうか、受け手要件を満たしているかがポイントとなります。所定の申出書、添付書類などの書類で、これら要件をクリアできていることを具体的に明らかにする必要があります。
市町村が、農業委員会の決定を経て、農用地利用集積計画を作成し、これを公告した翌日から権利が設定されます。
※ 市町村は、現在、利用権の設定等を希望する者に対しては、極力(3)の農地バンクの活用を勧奨するよう指導されています。
(3) 中間管理事業法に基づき農地バンクから権利を取得する方法
農地バンク(農地制度の概要(4)を参照)は、農地の出し手から農地を一度借受け、担い手にまとまった農地を貸付け(転貸)することを任務としています。
農地バンクから農地を借り受けるためには、農地バンクが実施する借受け希望者の公募に応募して、借受け希望者として登録、公表されていることが必要です。農地バンクは、通年で借受け希望者を公募しています。応募者の中から、「貸付けルール」に基づき、最も適当な借り手を選定し、「農用地利用配分計画」を作成します。都道府県知事の認可、公告により配分計画の定めるところにより権利が設定されます。農地法の許可は不要で、出し手と個別に交渉する必要はありません。
農業参入を検討中の新規就農者で、出し手との個別交渉による農地調達の目処がつかない場合には、借受けを希望する地域に係る農地バンクの借受け希望者の公募に応募することが良いでしょう。
応募に当たっては、次の事項等を明らかにした申込書を提出します。
① 借受けを希望する農用地等の種別、面積、農用地等の条件
② 借受けた農用地等に作付けしようとする作物の種別
③ 借受けを希望する期間
④ 現在の農業経営の状況
⑤ 当該区域で農用地等を借受けしようとする理由
以上いずれの場合でも、農地の手当、営農計画の作成、新規就農支援などに関し、地元の市町村又は農業委員会、都道府県、同農地バンクなどに前広に相談されると良いです。その上で、最良の方法を選択しましょう。
当該コンテンツは、「一般社団法人 全国農業会議所」の分析に基づき作成されています。