更新日
事業計画・資金計画の作成について、5年間の計画を策定した場合の具体例を用いて説明します。事業計画と資金計画の違いについても確認します。
1.事業計画(利益計画)を作成する
「事業計画書の作り方」の項を参考に利益計画を策定し、各年度の利益計画の合計額を時系列に並べた中長期の事業計画書を作成します(図1)。
このとき、「減価償却費」については個別の欄を設けて減価償却費の金額を年ごとに把握できるようにしておくと、資金計画の検討の際に便利です。
減価償却費は、個人事業の場合、青色申告決算書の3ページ目、「減価償却費の計算」欄の年額を使用します。法人の場合は、決算書とは別に作成している減価償却資産台帳などを用いて、当面5年間の減価償却費を把握します。
減価償却方法が定額法の場合は、毎年、同額の減価償却費ですが、定率法の場合には年ごとに減価償却費が異なるので注意が必要です。
ここでは、毎年、同程度の規模、同じ作目の組合せで営農する前提での計画を立てました。減価償却費は減価償却台帳で把握した値、農地賃借料は現在払っている金額で設定、それ以外は、万円単位で丸めた数字で計画しました。
2.資金計画を作成する
資金計画(資金繰り表)の形式や作成方法はいろいろありますが、ここでは法人の税引後利益を出発点に加減算を行う方法で作成した簡便的な資金繰り表をご紹介します。
個人事業の場合にも、基本的な考え方は同じです。個人事業の場合の「税引後利益」欄は、青色申告特別控除前の所得金額から、所得税、住民税、経常的な生活費相当額(専従者給与も加味して設定する)を差し引いた金額とします。
資金繰り表は、現預金の収入・支出の予定を集計して、資金が不足せずに事業を続けられるかどうかを把握するものですので、損益ではなく、資金収支で考えます。とはいえ、利益計画での損益項目のほとんどは、多少のタイムラグはあるものの、発生時に資金収支を伴うものです。
そこで、今回作成する資金計画は、損益計算の最終値、税引後利益をもとに、損益項目のうち資金収支の伴わないものや、損益計算に関係しないが資金収支を伴うものなどを加減算する方法で作成します。
X1年の期首現預金残高(a)は、直近の現預金残高を参考に設定します。税引後利益欄は、利益計画で算定した各期の税引後利益を設定します。
調達(収入)欄(b)は、税引後利益以外に、①損益計算で費用とした金額のうち資金支出の伴わないもの、②損益計算に関係しないが資金の収入があるものを集計します。代表的なものとして、①は減価償却費、②は金融機関等からの資金借入です。
運用(支出)欄(c)は、主に、損益計算で費用としていないが、資金支出のあるものを集計します。代表的なものは、借入金の返済と設備投資による代金支払です。ただし、酪農経営などの場合は、損益計算で費用から控除した金額のうち資金収入の伴わないものとして、「育成費振替高」も集計対象になります。
期末現預金残高(d)は、期首現預金残高(a)+調達(収入)計(b)-運用(支出)計(c)により計算されます。
そして、各期の期末現預金残高(d)は、翌期の期首現預金残高(a)となります。
(図1)で作成した利益計画をもとに作成した資金計画が(図2)です。利益計画では、毎年同額の利益が出ていましたので、問題がないように見えましたが、資金計画を見ると、期末現預金残高がだんだんと減少しています。X5年までは一応、現預金残高が不足することはありませんが、利益計画とは異なり、将来的な不安要素があることがわかります。
このように、損益と収支は異なるものですので、事業についての計画を立てる際には、利益計画だけでなく、資金計画も検討する必要があるのです。
当該コンテンツは、「アグリビジネス・ソリューションズ株式会社」の分析・調査に基づき作成されております。