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いま、インターネット(WEB)を使って販路を拡大している生産者が増えています。ここでは、WEBを使った販路開拓の考え方についてまとめます。
1.基本用語の整理
まず、初めに基本用語を整理していきましょう。
<EC>
ECは、Electronic Commerceの略で、日本語では電子商取引といいます。インターネットなどを介して行われる電子的な商取引の総称です。
つまり、自分のWEBサイトで消費者に直接販売することも、EメールやLINEで注文を受けて販売することも、スーパーなどのバイヤーとPDFで注文を受けることも、すべてECということになります。
良く使われる言葉に、ECサイトというものがありますが、直訳すると「電子商取引をするサイト」ということになりますが、一般的にはWEBで商品販売を行うサイトを指します。
<BtoB>
BtoBは、Business to Business の略であり、企業や事業者間での取引を指します。例えば、農業法人がスーパーと行う取引は事業者間なのでBtoBですし、居酒屋との取引もBtoBです
<BtoC>
BtoCは、Business to Customer の略であり、事業者(Business)と個人(Customer)との取引を指します。例えば、自社のWEBサイトで個人向けに販売している場合はBtoCということになります。
<CtoC>
CtoCは、Customer to Customerの略であり、個人間取引を指します。ヤフオクやメルカリなどのサイトで、個人間で商取引を行う場合は、こちらになります。もし、自分が「業」として農産物を販売する場合は、こちらには該当しません。
2.WEB(ECサイト)を活用した販路拡大
農業生産者におけるWEB活用のパターンは以下のように整理できます。
(1) 自社ECサイト
自社でインターネット通販の窓口を作り、それを通じて消費者から直接受注し、販売するものです。専用のWEBサイトを構築し、そこを窓口とすることが多いですが、ブログや、facebookなどのSNSを窓口とすることも可能です。
最近では、自社でECサイトを簡単に構築できるサービスなども普及していますので、それらを活用すれば低コストでスタートできます。有名なサイトでは、https://stores.jp/などがあります。
<自社ECサイトのメリット>
・自社で完全にサイトの運営などをコントールできる
・自社でサイトを構築すれば、販売手数料などがかからない
(カード決済手数料などを除く)
<自社ECサイトのデメリット>
・集客も自社で実施しなければならない
・自社でECサイトを構築するためには知識が必要
(手数料はかかるが、簡単に構築できるサービスの利用で対応可能)
・外注でWEBサイトを作る場合、コストが発生する
(2) ECプラットフォームの活用
ECプラットフォームとは、ECを行うための共通のシステム基盤(インターネット上のショッピングモール)を提供するサービスを指し、そのECプラットフォームの上に、複数の事業者が店を作って販売する形態となっています。有名なECプラットフォームとして、"楽天"や"Yahoo!ショッピング"が挙げられます。
ECプラットフォームに出店する場合、基本的に月額の利用料や販売金額に対して手数料が発生しますが、一定の集客ができることに加え、決済の仕組みが利用でき、また販売をサポートする様々なサービスを受けることができます。
出店・出品にあたっては、それぞれのECプラットフォームが提供するサービスの特徴や手数料体系などを把握し、比較・検討するとよいでしょう。
<ECプラットフォームのメリット>
・集客をプラットフォームが実施してくれる
・WEBページの記入等が専用ツールなどで簡単にできる
・価格を自分で決めることができる
・顧客の情報を直接入手できたり、コミュニケーションできたりする
<ECプラットフォームのデメリット>
・プラットフォームを自分でコントロールできない
・利用には手数料が発生する
・別の生産者と比較されやすい
・売れる/売れないは自分の販売努力次第である
・小口出荷が増えるため、出荷・梱包の手間がかかる
(3) EC販売事業者との取引
EC販売事業者と通常の商談を行い、取引を行うものです。
EC販売を実施している事業者の中には、日常の生活に必要な野菜・果物を提供する事業者から、特別な日のお取り寄せやギフトに特化した事業者まで多くの事業者が存在します。有名なEC販売事業者としてはオイシックス社があげられます。
この場合、小売業としてのEC事業者に販売することになるため、スーパー等と同じようにバイヤーと商談して販売することになります。
こうした企業のバイヤーとは、商談会や展示会などで出会うことができるほか(商談会活用のポイントについてはコチラから)、その企業のWEBサイトなどで生産者を募集していることもあります。
また、常に新しい生産者を探しているバイヤーも少なくありませんので、自分からメールやWEBサイトの問い合わせフォームからコンタクトしてみることも有効です。
<EC販売事業者との取引のメリット>
・集客をEC事業者が実施してくれる
・WEBページの記載等は顧客が実施する
・基本的には買取で仕入れされるため、確実に販売できる
・まとまった量の出荷で良いケースが多く、出荷・梱包の手間が少ない
<EC販売事業者との取引のデメリット>
・販売サイトや消費者への訴求内容を自分でコントロールできない
・顧客の情報を得ることができず、直接コミュニケーションが取りにくい
・消費者への販売価格を自分で設定することができない(バイヤーへの納価の商談のみ)
3.EC等でのコミュニケーションのポイント
まずは、情報伝達のために、図や写真、動画などの活用を考える必要があります。"百聞は一見にしかず"という諺がある通り、ニュアンスを伝えることが難しい商品などは、情報を図や写真で見せることが大切です。
現在、WEBによるコミュニケーションでは、facebookやツイッター、ブログ等のSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の活用が重要となっています。
SNSの活用により、販売者-消費者のコミュニケーションのほか、消費者間のコミュニケーション(拡散)も狙うことが出来ます(下図)。とくに、この消費者間の「拡散」は自分でコントロールすることが難しく、「炎上」リスクがあるものの、非常に強力な情報展開が期待できます。
最近では、SNSを通じてキャンペーンの応募受付や販促の実施告知を行う企業も増えてきています。「いいね」を押した人から抽選で○名に当たる、ツイッターでキーワードを発信した人から○名に当たる、といったキャンペーンなどがこれに該当します。
ただし、一方からの情報発信のみであればSNSでなくても十分に可能なのであって、SNS活用の本質はコミュニケーションであることを忘れてはなりません。
<SNS投稿時のポイント>
□ こまめに更新すること
(SNSのタイムラインは更新順で上位に出ることが多いため)
□ 写真と合わせた投稿
(写真には「人」が一緒に写っているとより効果的)
□ ユーザーとの交流(内容とレスポンス)の実施
(特にレスポンスは重視されがちであり、注意が必要)
当該コンテンツは、公益財団法人 流通経済研究所 農業・地域振興研究開発室 折笠室長の分析に基づき作成されています。