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農業所得用の青色申告決算書(収支内訳書)の作成
農産物の棚卸
個人農業者の場合、「収穫基準」により期末に未販売の農産物を、収穫した時の生産者販売価額(時価)で評価し、総収入金額に算入します。ただし、①野菜等の生鮮な農産物、②米麦等の穀類を除く果物やいも類などの農産物のうちその数量が僅少なものは棚卸を省略しても差し支えありません。
減価償却
個人事業者の場合、事前に税務署に届出をしなかった場合は、定額法により減価償却費を計算します。また、個人事業者の場合、必ず減価償却をしなければなりません。これを「強制償却」といいます。
事業主の報酬
個人事業の場合、経営者である事業主本人に給与を支払うことはできません。農業所得が個人事業主の報酬に相当しますが、事業主本人に実際に報酬として支払ったとしても必要経費として差し引くことはできません。
家事消費・自家消費
農産物などの棚卸資産を家事や事業などのために消費したり、贈与した場合は、販売はしていませんが、原則としてその消費時の価額を収入金額に計上します(注1)。
補助金収入
補助金を受領した場合は、基本的には雑収入として収入金額に計上します。ただし、固定資産を取得するために受領した補助金は、収入金額に計上せず、固定資産の取得価額から控除します。
農作業受託料
自己所有の農機具を使用して他者の田畑における農作業を請負った場合の農作業受託料は、雑収入として収入金額に計上します。
所得税の計算
所得税の計算では、まず、農業所得などの事業所得や農協の出資配当などの配当所得、不動産を貸し付けた際の不動産所得、農業機械を売却した際の譲渡所得などをそれぞれ計算し、合算します。これを総合課税といいます。このとき、不動産所得、事業所得(営業等所得、農業所得)、土地・建物以外の事業用資産の譲渡所得に損失が生じている場合は、その損失の金額を控除します。これを損益通算といいます。
次に、損益通算をした後の所得金額から、社会保険料控除、配偶者控除や扶養控除など、各種所得控除の金額を差し引きます。各種所得控除の金額を差し引いた後の課税総所得金額に、所得金額に応じた税率を乗じて所得税額を求めます。
会計期間と申告期限及び納税
個人事業の会計期間は、原則としてその年の1月1日から12月31日の「暦年」となります。
また、所得税の確定申告の申告期限は翌年3月15日です。所得税の納期限も同じく翌年3月15日となります。ただし、本人名義の預貯金口座から申告税額を自動的に納税する振替納税の手続きをしている場合は、翌年4月下旬に引落が行われます。
なお、個人住民税は前年の所得税確定申告書を基に税額が計算、決定され、市区町村長から通知されます。普通徴収の場合の納期は、年4回(6月末、8月末、10月末、翌年1月末)です。
青色申告特別控除及び基礎控除の改正
令和2年分から基礎控除が38万円から48万円に引き下げられる一方で、青色申告特別控除が引き下げられます。
青色申告特別控除とは、青色申告の特典で、不動産所得または事業所得を計算する際、55万円または10万円を控除することができる制度です。令和元年分までは、65万円または10万円でしたが、令和2年分から原則として55万円または10万円に変更となりました(改正1)。
ただし、e-Taxによる電子申告または電子帳簿保存を行う場合は、引き続き65万円の青色申告特別控除が受けられます(改正2)。
(出所: 「青色申告特別控除額 基礎控除額 が変わります!!」国税庁リーフレット)
(注1)アグリウェブ コラム「個人経営の確定申告のポイント①家事消費・事業消費」
https://www.agriweb.jp/knowledge/1382.html
当該コンテンツは、「アグリビジネス・ソリューションズ株式会社」の分析・調査に基づき作成されております。