(公益財団法人日本生産性本部 統括本部国際協力部 高柳 敦彦)
カイゼンとは?
今回のコラムでは、Vol.1とVol.2で概要をご紹介しました「カイゼン」について、もう少し詳しくご紹介します。
「カイゼン」自体は総称で、下図のように傘に例えられます。カイゼンの中には様々な問題発見・問題解決の手法が含まれており、私たちの「酪農カイゼンパッケージ=酪農家の働き⽅改⾰のためのガイドブック」では、これらの手法の中から主に「5S+1S」と「ムダ取り」を紹介しています。
カイゼンにおいて重要な柱の5S+1Sとは?
5Sとは「整理(Seiri)、整頓(Seiton)、清掃(Seisou)、清潔(Seiketsu)、躾(Shitsuke)」、1Sとは「安全(Safety)」を意味し、それぞれのローマ字表現の頭文字Sをとって「5S+1S」と表記されます。5Sを行う意義は大きく分けて以下の二つがあります。
(1) ムダの削減
5Sを行うことにより、ムダが無くなり労働時間が短くなり、働き方改革を実現できます。また、利益向上にもつながるだけでなく、作業環境がカイゼンされ、安全かつ働きやすい職場をつくることができます。
(2) 問題の顕在化
人間はついつい問題を隠そうとしますが、5Sを行うことによって「見える化」が推進され、問題を顕在化でき、早く適切な対策がとれます。
倉庫の中を覗くと下図のような状態になっていませんか?
永年仕事を行っていると、現場にはムダと不要物が蓄積されます。これは特別なことではありません。”ムダと不要物”とは、過剰な在庫品、使用していない機械、装置、工具、古い書類、ファイルなどです。このまま放置しておくと、いつまで経ってもこの状態のままで、物探しのためのムダな時間や事故を誘発するリスクが生じます。
この状態に対して、解決の糸口を示してくれる1つが5Sです。
5Sの概要を示したものが以下の図です。5Sの具体的なカイゼン手法については、この先の本連載の中で記載したいと思います。
カイゼンのもう一つの重要な柱、ムダ取りとは?
働き方改革を推進しながら収益性、生産性を高めるためには、徹底的な業務効率化が必要不可欠です。そのためには、付加価値を生まないムダを徹底的に排除しなければなりません。
【問題】ムダを認識するために、まずは付加価値作業を正しく認識しなければなりません。まず、下図で示す一連の作業の中で、付加価値作業と呼べるものはどれでしょうか? |
【正解】「(5)ドリルで穴を開ける」のみです。その他は"付帯作業"と呼ばれ、付加価値作業を行うために生じる作業です。これらの付帯作業は全くのムダ作業ではありませんが、できるだけ簡潔に行う方法を考える必要があります。 |
付加価値を生まないムダは、「7つのムダ」と定義しています。ムダの徹底的な排除によるコスト低減の達成に向け、「現場に潜む7つのムダ」を見つける目を常に持ち、カイゼンすることが非常に大切です。
「7つのムダ」とは、以下の7つの総称です。
① 加工のムダ
② 在庫のムダ
③ 造りすぎのムダ
④ 手待ちのムダ
⑤ 動作のムダ
⑥ 運搬のムダ
⑦ 不良・手直しのムダ
ムダ取りでは、付加価値作業をしっかり定義し、それ以外の作業をムダと一旦認識し、見つけたムダを取り除いていくことが重要です。
ムダ取りの具体的なカイゼン手法についても、今後の本連載の中で紹介したいと思います。
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当該コンテンツは、公益財団法人日本生産性本部の分析・調査に基づき作成されています。
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