(公益財団法人日本生産性本部 統括本部国際協力部 越後 比佐代)
第1回目のコラムでは、モデル酪農家の1日の作業の流れを可視化し、搾乳時間短縮の事例についてご紹介しました。第2回目では、5S+1Sのカイゼン事例をご紹介します。
5S+1Sのカイゼン事例
コンセント回りと配電盤設備牛舎や搾乳を行うパーラー周辺は土、埃、ゴミが散乱しやすく、むき出しの配電盤では配線コードの劣化によって雨水の浸入や結露が発生し、配線がショートして発火する恐れがあります。
この様な問題点のカイゼン案として、安全性を確保するため電気系統に埃や水等が入らないようにするため、次のような工夫が挙げられます。
①定期的な清掃ルールを定め、チェックシートを作成する
②責任者が定期的に巡回し、電源回りの清掃状況とコンセントの半差しをなくす
③使用していないコンセントはコンセントカバーを取り付ける
④電気系統への浸水を防ぐため、器具箱に収める(防水加工の施された金属製の器具箱の中に収める。または、アクリル板で全体を覆うだけでも水の浸入を防止できます。)
「整理」のカイゼン
以下の図表は「整理」のカイゼン前後の比較を表しています。
牧場の作業は多岐にわたるため、様々な道具を保管する必要があります。中には季節毎に必要になる物、年に数回しか使用しない物もあり、時として保管場所が不明確となります。
モデル酪農家の牧場においても不要と思われる道具についても、責任者が不明瞭で放置されてしまうケースがありました。整理(不要品の廃棄)が出来ても整頓(定位置化)が継続しないこともあります。
本事例の整頓ポイントとして、次のようなことが挙げられます。
①使用頻度が極端に少ない物は、別の倉庫等に保管する
②倉庫内の床にラインを引き、物を置くエリアと置かないエリアを明確にする
③棚は、使用頻度の高い物を肩から腰の高さ(ストライクゾーン)に配置する
カイゼンは経営課題の柱のひとつ
上述の事例でご紹介したカイゼン・5S+1Sを推進するためには、経営者のリーダーシップが欠かせません。「カイゼンは経営課題の柱のひとつ」と位置付けて、経営者が率先垂範して従業員と一緒に進めることが極めて重要です。
方法としては従業員とのビジョンの共有、経営者主導のパトロール、作業のマニュアル化、見える化、従業員のモチベーション等が挙げられます。経営主がチーム全体でカイゼンを進めていこうという機運を醸成・維持する仕組み、従業員が自分事として現場のカイゼン意識を持ち続ける仕組みを作ることがカイゼン・5S+1Sを継続する重要なポイントです。
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