(公益財団法人日本生産性本部 コンサルティング部 平澤 允)
「5S+1S」とは?
前回のコラムでは、「5S+1S」のうち「5S」について詳しくご紹介しました。
「5S」とは「整理(Seiri)、整頓(Seiton)、清掃(Seisou)、清潔(Seiketsu)、躾(Shitsuke)」、「1S」とは「安全(Safety)」を意味し、それぞれのローマ字表現の頭文字Sをとって「5S+1S」と表記されます。(整理・整頓を合わせて2S、そこに清潔を加えて3Sと呼ぶ場合もあります。)
今回は、「5S+1S」のうち「+1S」について詳しくご紹介します。
安全(Safety)活動
「+1S」とは、従業員や設備を事故から守る、事故が起こらない仕組みを作る「安全(Safety)」活動のことです。
個の安全活動は人間の生活に関わる全ての面において最優先されるべき事項である一方、残念ながら職場では「労働災害」という事故が発生してしまうリスクがあります。
その労働災害の要因は大きく設備要因と人的要因に分類され(下図参照)、これらを排除するために問題をいかに早く発見し、解決(予防)していくかという活動が安全活動と言えます。
問題を発見する
災害を予防するために日頃の安全活動は極めて重要です。そのために、全従業員を対象とした定期的な安全教育や安全パトロールなど全員参加の啓蒙・注意喚起活動を実施することを推奨します。
特に日頃の業務に関しては、事故報告書の共有化に加え、以下に説明する「ヒヤリハット活動」の推進をお奨めします。
安全活動は災害ゼロを基本理念としており、災害ゼロを支える考え方に「ハインリッヒの法則(1:29:300の法則)」があります。
これは、アメリカの保険技師ハインリッヒが発見した法則で、「1件の重大事故や重大災害(死亡事故など休業につながる災害)の背景には29件の事故(休業には至らない負傷事故)があり、さらにその背景には300件のヒヤリハット(微小災害:負傷には至らなかったが、ヒヤッとした、ハッとした体験)が発生している」ことを統計的に証明したものです(下図参照)。
この法則からわかるように、ヒヤリハットレベルの微小災害を発見して根絶することが、重大災害を発生させないために重要となります。
そのための方法が「ヒヤリハット活動」です。これは従業員が危険のニアミスを感じた(負傷には至らなかったが、ヒヤッとした、ハッとした体験)時に記録を作成・共有するというもので、危険箇所の発見とともに安全意識の向上に役立ちますので、ぜひ進めていただきたいと思います。
問題を解決(予防)する
ヒヤリハット活動で発見された問題を解決するために、職場の安全についてルールを定め、遵守することで軽微な事故や重大な事故の防止を図ります。従業員が決められたルールを守らないことで災害が発生しているケースが多くあります。もちろん、職場の安全についてルールがない場合には早急に作成する必要があります。
安全対策として危険な場所および怪我をする可能性がある場所には、物理的に対処することも効果的です。
例えば、落下の恐れがある場所にはその周りに柵を設置して近寄れないようにしたり、下図のようにビジュアル表示によって注意喚起したりするなどです。また、重機を運転する際にはヘルメットなどの保護具を装着することで、作業者の安全を確保します。
前回および今回のコラムでは、カイゼン活動の基礎となる「5S+1S」について紹介いたしました。
これらを実施することでより効率的な作業が実現されるとともに、「躾」という決められたルールを一同で守る職場の風土が醸成されます。
次回以降のコラムで紹介する「ムダ取り」を実施する際にも「5S+1S」が為されていることが基礎となりますし、これ自体でもより良い働きやすさが実現されますので実践してみていただけましたら幸いです。
シリーズ『カイゼンによる働き方改革と生産性向上』のその他のコラムはこちら
日本生産性本部 業務改善セミナー
労働力人口が減少し、人手不足は今後も解消されないため、労働生産性の向上とそのための業務改善・効率化は急務となっています。日本生産性本部は、具体的な事例を通じて業務改善の進め方を学ぶプログラムを提供しています。詳しくは、こちらのホームページをご覧ください。
なお、業務改善セミナーの一環として、2021年3月24日(水)には無料の酪農家支援事業者および酪農家向けオンライン・セミナーも予定しています。カイゼンの考えを酪農家の作業現場で実践することで効率化を図り、総労働時間を短縮することをねらいとしており、「5S+1S」「ムダ取り」「改善ポイントを見つける簡易診断ツール」について紹介いたします。
当該コンテンツは、公益財団法人日本生産性本部の分析・調査に基づき作成されています。
公開日