〔2023年5月〕5月も全国的に暑く 天気急変に注意_シリーズ『農てんき予報〜農業に役立つ天気の情報〜』Vol.21

(株式会社ウェザーマップ 寺本卓也)

みなさんこんにちは。農てんきな気象予報士の寺本です。

ゴールデンウィーク、いかがお過ごしですか?田植えや畑仕事できっと忙しいですよね。毎日本当にお疲れ様です。

先日、お世話になっている農家さんから春せりを頂きました。これが香り豊かでとても美味しかったです。

ゴールデンウィークはやはり収穫でお休みではないようです。

さて、だんだん日差しが強まり汗ばむ日が多くなってきました。さらに荒れた天気も増えてきましたね。

そう、5月は暑さと、天気急変のシーズンで注意が必要なんです。

今月も最新の長期予報から農業に役立つお天気情報をたっぷりお届けしますよ。では、農てんきスタートです。

今年も遅霜の影響

まずは今年も遅霜の話題からです。

3月に入ってからの急激な気温の上昇とともに、今年は桜の開花が全国的に早まり、果樹に関してもその傾向は同じでした。

モモやナシ、リンゴといった果樹の開花が例年より早まった事で、やはり今年も霜による被害が発生。

ナシのめしべは、急激な寒さで枯れて真っ黒になってしまいました。今後、収穫量の減少が予想されます。



霜でアスパラが曲がる

また収穫の最盛期を迎えるアスパラ農家も霜による被害が深刻でした。

朝の急激な冷え込みにより、アスパラの細胞が破壊されて黒く変色したり、曲がったりする「軟化現象」が発生しました。

アスパラは繊細な野菜で、実は暑さにも弱いので、5月に入るとハウス内での高温障害などが心配になってきます。


5月前半はかなり暑いか

では、気になる5月の1か月予報(平均気温)を見ていきましょう。

今月前半は全国的に平年に比べて高い予想となっています。5月前半は暑くなりそうです。

そして、後半にかけては平年並みとなりますが、寒くなる訳ではありません。

東京の5月下旬の最高気温の平年値は24.9℃ですから、今月はずっと暑いな〜という1か月になる可能性が高く、ハウス内の温度が上昇しすぎないように気を付ける必要がありそうです。

今月は早くも梅雨のような大雨か

さらに、今月の降水量も見ていきましょう。

東・西日本で降水量が平年並みか多い予想となっています。

また北日本に関しても、数値予報の計算を細かく見ると、雨量が多くなるかもしれないという結果が出ています。

早くも梅雨時期の大雨のような事が起きるかもしれません。

梅雨の走りのような大雨か

ウェザーマップ独自の16日予報で福岡の天気を見ていきます。

ゴールデンウィーク後半は雨マークが並びます。このあたりは前線が停滞し、雨が強弱をつけながら降ったり止んだりと、やはり早くも梅雨のような天気となりそうです。

その他の地点をご覧になる場合はウェザーマップHPウェザーマップHPを是非ご活用ください。

メイストーム(5月の嵐)に注意

気象予報士の中では、5月は低気圧が急速に発達しやすい事で有名です。

台風と同じくらいの勢力を持つこの時期の低気圧をメイストームと言ったりします。ではなぜ5月は低気圧が発達しやすいのでしょうか?それは「温度差の違い」です。

「暖かい空気」と「冷たい空気」の温度差が大きい程、低気圧は発達します。

5月の上空では、南から暖かい空気が流れ込む一方、まだまだ北からは雪を降らせるような冷たい空気が流れ込んだりと、空気の流れが大きく蛇行します。


5月は大雨と雷雨が発生しやすい

5月に入ると、雨の降り方が4月とはだいぶ変わってきます。

何が違うかと言うと、雨の量です。場所によっては1日の降る雨の量が100ミリを超してくる大雨となるような所が出始めるのは、5月に入ってからがほとんどです。

「土砂災害・低い土地の浸水・河川の増水に注意警戒」というワードも出始めます。

近年の5月は各地で暑く、地上の空気がどんどん上昇し大雨をもたす積乱雲が発達しやすい状況となります。

さらに、大雨の他に「落雷・ひょう・竜巻」が発生しやすいのも5月の特徴的です。

昨年は、関東から東北にかけて、天気が急変し局地的な激しい雷雨が発生しました。

「大気の状態が不安定」という言葉を聞いた事はありませんか?「上空の空気が冷たく」、「地上の空気が暖かい」時に雷雲が発生しやすくなる状況の事です。

真夏は地上が暑すぎて「ひょう」が溶けてしまいますが、この時期はまだ暑すぎないため「ひょう」が溶けずに地上に落下してくるため、農作物への被害が発生するのです。

ひょう被害を受けやすい野菜

ひょうによる被害を受けやすい野菜は茎葉類です。

キャベツやレタスは激しいひょう被害にあうと玉が割れたり、砕けたりします。

トマト、キュウリ、スイカ、ナスなどの果菜類においても傷ついたりして、商品価値が低下します。

ひょうへの対策は

露地栽培では、雷雨やひょうの予報がされた時は、収穫期に近い物は早めに収穫したり、ビニールや寒冷紗などで被覆するなどの対策が有効です。

ただ、そうは言っても、いきなり発生するのが「ひょう」です。広大な畑に対してそれらの対応をすぐに行うのは難しいでしょう。

事後の対策としては、草勢の維持と傷口回復のために液肥の葉面散布や追肥、病気にならないように殺菌剤の散布を行うなどが必要となってきます。

アフターケアをすぐにできる準備は進めておくとよいでしょう。

雷活動度(雷ナウキャスト)

また、気象庁HPでは雷が今、実際にどこで発生しているかや、1時間後どこで発生しやすいかを予測しています。

こちらは「雷ナウキャスト」の画像です。雷雲の危険度を4段階に分けて教えてくれます。

雲行きが怪しいなと思ったらぜひ活用してみて下さい。みなさんの畑の周辺の危険度が一目で分かると思います。

天気急変のサイン

突然起きる雷雨やひょうは、なかなか事前に予測するのが難しい現象です。

でも、実はいくつか簡単に分かるサインもあったりします。それはこちらです。

① ゴロゴロと雷の音が聞こえてくる
② 真っ黒い雲が近づいてきている
③ 急に冷たい風が吹いてきた

こんな状況に遭遇しましたら、それは雷雲が近くにいるサインです。

さらに、雷雨が発生しそうな日には、テレビのお天気キャスターが「大気の状態が不安定」なんてキーワードを連呼し出します。これらは天気が急変するサインです。

今月は日に日に増す強い日差しと暑さ、雷雨・ひょうなどの天気の急変から農作物を上手に守っていきましょう。

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