(株式会社ウェザーマップ 寺本卓也)
令和6年1月1日に発生した令和6年能登半島地震により、被害に遭われた方々に心からのお見舞いを申し上げます。
また、先月末には今季最強寒波によるニュースが大きく報じられ、気象庁は先月24日、福井や滋賀に「顕著な大雪に関する気象情報」を発表しました。
被災地である北陸や近畿など日本海側の地域で記録的な大雪となりましたが、今月もまだこのような大寒波がやってくるのでしょうか。
そもそも暖冬だから雪は降らないのでは?そんな皆さんの天気にまつわる疑問を、今回もわかりやすく、そして楽しくお届けしていきます。
農業に役立つお天気情報「農てんき予報」それではスタートです。
暖冬の原因
昨年の春から「エルニーニョ現象」が発生しています。
日本から離れた南の海がいつもの年より暖かくなっている現象のことですが、日本付近にもその暖かい空気が流れ込み暖冬となっています。
暖かい空気の勢力が強く、寒気が日本にやってくるのをブロックしているのです。
そうなると、寒気が日本に流れ込みにくく平年に比べると雪の量が全国的に少なくなる訳です。
ドカ雪でも雪不足の所が多い
積雪の深さの平年比を見ていきます。
この図は先月の大寒波で日本海側を中心に大雪となった翌日(25日)の積雪の深さ(平年比)を表しています。
今年1月1日に発生した能登地震の被災地でも大雪となりましたが、意外にも今シーズントータルで見ると青色の所(平年より雪が少ない所)が目立ちます。
雪がいつもより少ない所が多いのです。ただ、雪が全く降らないかというとそうではありません。
言い換えると暖冬の年は、先月末の大寒波のような、1回のドカ雪に注意が必要なのです。
暖冬でも油断できない ドカ雪に注意
1か月予報(降雪量)を見ていきますと、今月も日本海側の各地は雪の量が少ないと出ています。
では雪が降らないのかと言うと、そうではありませんでしたね。実は先月も降雪量は少ない予想でした。
それなのに短い期間で大雪となりました。
暖冬では、定期的に雪が降るのではなく、晴れの日が続いたあと、急に1回のドカ雪が発生しやすいのです。
そのため、今月も念のためドカ雪に注意が必要となりそうです。
暖冬傾向まだ続く
気象庁1か月予報(平均気温)を見ていきます。
暖かい空気の流れこみやすい状況が続き、2月の中旬頃までは、東日本西日本とも平年よりかなり高い予想となっています。
また、中旬以降も西日本を中心に、気温の高い傾向が続く見込みです。
どうやら今シーズンは暖冬のまま冬が終わりそうです。
西日本は雨の日が多いか
続いて、1か月予報(降水量)を見ていきます。
北日本は平年並みか少ない予想の一方で、西日本は降水量が多い見込みです。
冬の終わりの時期である2月は、だんだんと上空の寒気が弱まり、日本付近に低気圧が近づきやすくなる季節でもあります。
この図から予想されるのは、今月は西日本には低気圧が近づき雨の降りやすい日が多くなりそうです。
暖かさの原因 エルニーニョ現象の終わりか
さて、そんな暖冬の原因であるエルニーニョ現象ですが、ようやく終わりが見えてきました。
気象庁発表のエルニーニョ監視速報によると、5月にはエルニーニョ現象が終わり平常の状態に戻っている確率が60%と高い予想になっています。
春らしい暖かさに戻るか
暖冬の原因となったエルニーニョ現象が終わる事で、偏西風の流れも変わっていきそうです。
暖かい空気に押し上げられ日本のかなり北を蛇行していた偏西風が少しずつ南下する予想となっています。
この先は、少しずつこの記録的な暖かさも落ち着いて、春らしい暖かさとなっていく予想といえます。
天気も少し落ち着くといいのですが、続きはまた次回詳しくお話し致します。
福島を支える若きイチゴ農家
私は先月27日に、福島県鏡石町のイチゴ農家「鏡石農遊園」へ取材しました。
以前にもお世話になった事のある農家さんです。
暖冬の影響は出ているのか?を取材する名目と、半分以上はこの農園の絶品のイチゴが食べたいという、よこしまな気持ちからでした。
そんな私を優しく迎えてくれたのは、若きイチゴ農家の飛澤良太さんです。
福島を代表する2つのイチゴ
鏡石農遊園では、福島県オリジナル品種の「ふくはる香」と「ゆうやけベリー」を栽培しています。
ゆうやけベリーは2023年にデビューした、粒が大きく、酸味が少なく、甘さが強い今一押しの品種です。
そして、私が食べているのは、2006年デビューの「ふくはる香」です。これがとてつもなく美味しいのです。
甘みがブワッと口に広がる一方、酸味もあるのでバランスがよく、さらに芳醇な香りがするためとても上品なのです。
今年の苺の出来映えは
飛澤さんによると、昨年夏の猛暑の影響で、苺の生育が遅れているということです。
というのも、温度が下がることによって苺は花を咲かせますが、あまりにも暑かった為、葉っぱだけが育ってしまっていたということです。
その為、苺の成熟するタイミングが平年よりも少し遅れてしまいました。
暖冬は「ふくはる香」に好都合
猛暑の影響により苺の販売開始は平年より出遅れたものの、意外にも暖冬はふくはる香に取って好条件でした。
いつもよりも日が長く、暖かい環境で育った苺たちは、その後すくすく育ち、甘さも平年に比べてアップしたということです。
新アイテム登場 特殊な光で害虫防除
さらに今年は新アイテムが加わっていました。その名も「モスバリア」。
この赤い電灯は特殊な光を放ち、苺の害虫であるアザミウマの視力を奪います。これによりアザミウマによる被害がゼロになったそうです。
更にこのモスバリアの凄いところは、少ない本数でハウス全体の苺を守るという効果があるということです。
ゆうやけベリーは暖冬でピンチ
先ほど暖冬は「ふくはる香」の生育に都合がよかったとお伝えしましたが、実はもう一つの品種「ゆうやけベリー」にとっては不都合だったようです。
少しわかりづらいかもしれませんが、この写真は「ゆうやけベリー」の列です。イチゴの実がついているのが全体的に少なくなっています。
本来ならば、もっと多く実がついてるはずなのですが、暖冬の影響で一気に実がついてしまい、現在はスカスカの状態になっています。
そのため飛澤さんは、予約を頂いていたお客様へ100件以上キャンセルをされているそうです。
品種の違いにもよりますが、暖冬の影響はまだまだ今後の野菜の生育に影響を残しそうです。
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