(株式会社インテージ 西日本支社 リサーチデザイン部 牧野司)
家飲み需要の伸長による食卓の変化
こんにちは。インテージの牧野です。
新型コロナウイルスの感染拡大を背景として外出自粛が続く中、「家飲み」の需要が伸長しています。私自身、最近は焼酎にはまっており、焼酎用に陶器を購入するなど、家飲みを楽しめるよう工夫しております。周りの目や終電を気にせず、ゆっくり自分のペースで飲めることは、家飲みならでは楽しみ方なのではないでしょうか。
今回は、家飲み需要の伸長による食卓の変化に焦点を当てたいと思います。
家飲み需要の動向は?
家飲み需要の動向をみるため、家庭でのお酒の購入金額について、約5万人の購買行動を集めたインテージ消費者パネル「SCI」で確認しました。
モニター当たりのお酒の購入金額の推移をみてみましょう。近年減少傾向が続いていましたが、緊急事態宣言が発令された2020年4月から2021年1月までの購入金額は、前年同期と比べて109%と増加に転じており、家飲み需要が活況であったことが分かります。
▼お酒の購入金額・金額前年同期比の推移(%)/インテージSCI
どういったユーザーでお酒の購入金額が伸びているか?
それでは、お酒の購入金額はどういったユーザーで伸びているのでしょうか。
インテージSCIより、世代・未既婚別にみると、世代・未既婚問わず伸長していますが、未婚・既婚ともに、20-49才の伸びが50-69才よりも大きくなっています。
20-49才の若年・中年層は、新型コロナウイルスの感染拡大前には外食でお酒を飲むことが多く、コロナ禍では外食の代わりに家庭でのお酒の消費量を増やしていると推察されます。
▼お酒のユーザー別購入金額の前年同期比(%)/インテージSCI
どの種類のお酒が伸びているか?
次に、どの種類のお酒が伸びているかをみてみましょう。購入金額が大きく伸びていた20-40代に絞って、お酒の種類別の前年同期比を確認します。
▼お酒の種類別購入金額の前年同期比(%)/20-40代/インテージSCI
どの種類でも伸長していますが、ウイスキー、ワイン、ビール、低アルコール、焼酎で前年同期比が110%超と大きく伸びています。
ウイスキーは、ストレートやロックのほか、炭酸水で割ってハイボールとして飲むなど、好みに応じてさまざまな飲み方を楽しむことができることが好調の要因と考えられます。
ワインは、外食で飲んでいたものを自宅でも楽しむ動きや、オーガニックワインのように健康意識の高まりも市場をけん引する要因となったようです。
ビールは、2020年10月の酒税法改正により値下げされ、そのタイミングで発売された糖質ゼロを訴求する新商品の寄与もあり、伸長したと見て取れます。
低アルコールは、近年成長を続けている酒類であり、なかでも、食事にも合うと食事中の飲用を訴求するレモンフレーバーの商品の好調が続いています。
焼酎は、パック容器で比較的容量の大きい商品がとりわけ好調で、収納しやすく、容量当たりの価格を抑えられ、“お買い得感”があることが支持されていると推察されます。
お酒とともに食卓に並んでいるメニューは?
最後に、お酒とともにどのようなメニューが食卓に並んでいるのでしょうか。インテージ食卓調査「キッチンダイアリー」より、伸びの大きかった種類のお酒を確認します。キッチンダイアリーとは、2人以上家族の主家事担当女性を対象とした、食卓情報データです。
同時出現率_ビール、低アルコール、ウイスキー
▼お酒の種類別のメニュー同時出現率、前年同期比(%)/2020年4月―2021年1月/インテージキッチンダイアリー
(京浜、中京、京阪神3エリア計 2人以上家族の主家事担当者(20-40代) 夕食に絞る )
※同時出現率3%以上の中で、前年同期比105%以上のものを最大上位10位まで抜粋
ビール、低アルコール、ウイスキーでは、「焼き餃子」「やきとり」「刺身・魚のたたき」などの肉・魚類のほか、「フライドポテト・ハッシュドポテト」「卵焼き」「野菜の浅漬け・塩漬け」などの副菜でも、居酒屋では定番となるような“おつまみ”メニューが上位に並んでいます。
外出自粛の中、家庭でも“居酒屋”気分を味わえるよう、工夫しているのかもしれません。低アルコール、ウイスキーでは、「白飯」も上位に入っており、食事と合わせて飲用していると見て取れます。
同時出現率_白ワイン、赤ワイン
▼お酒の種類別のメニュー同時出現率、前年同期比(%)/2020年4月―2021年1月/インテージキッチンダイアリー
(京浜、中京、京阪神3エリア計 2人以上家族の主家事担当者(20-40代) 夕食に絞る )
※同時出現率3%以上の中で、前年同期比105%以上のものを最大上位10位まで抜粋
ワインでは、「トマトソースパスタ」「ピザ」「コーンスープ・コーンポタージュ」などの洋風メニューのほか、「肉と野菜の炒め物」「ソテー、炒め物(小さなおかず)」などの中華メニューや、「味噌汁」「雑穀入りご飯」などの和風メニューも上位に入っており、幅広いメニューで食事と合わせて飲用されているようです。
ワイン(赤)では、「せんべいあられ」「チョコレート」「ゼリー(フルーツ)」などのお菓子・デザート類も上位に入っており、食事中に限らず、食前や食後の時間をゆっくり楽しむ際にも、飲用されていると推察されます。
同時出現率_焼酎(乙類、甲類)
▼お酒の種類別のメニュー同時出現率、前年同期比(%)/2020年4月―2021年1月/インテージキッチンダイアリー
(京浜、中京、京阪神3エリア計 2人以上家族の主家事担当者(20-40代) 夕食に絞る )
※同時出現率3%以上の中で、前年同期比105%以上のものを最大上位10位まで抜粋
焼酎では、乙類の「のり巻き・太巻き」「肉じゃが」、甲類の「佃煮」「ふりかけ」といった和風メニューが上位に入っていることが特徴として挙げられます。前述のビール・低アルコール・ウイスキー・ワインなどと上位の顔ぶれが異なっており、食事やおつまみとの相性も考慮して、どの種類のお酒を飲むか選んでいるようです。
コロナ禍では、家飲み需要は伸長しており、食卓にも変化が見られました。家庭での時間を充実させるため、お酒と合わせて、食卓でも楽しみ方を工夫しているようです。
最後までお付き合いいただきありがとうございます。
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