(CCCマーケティング総合研究所 深井 翔)
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こんにちは。CCCマーケティング総研の深井です。
7000万人を超えるT会員の多種多様なTポイント提携先での購買データ、外食グルメサイトの口コミ・Twitter・TVメタデータなど、様々なデータを分析し、抑えておくべき食のトレンドをさくっとお伝えします。皆様の事業のヒントになれば幸いです。
最近の3カ月(22年6月〜22年8月)の食のトレンドの推移を追っていたところ、気になるメニューが伸長していることがわかりました。
今回は、麺類のトレンドをご紹介します。
内中外食と様々なシーンで活躍する麺類で、6〜8月という夏の季節に伸長したメニューから、直近のトレンドをご紹介します。
最近3カ月で着目の「麺類」 ※期間22年6月〜22年8月
まず、「麺類」カテゴリーのメディア・業態別の現状を分析しました。
ここでいう麺類は、そば、うどん、その他麺類、ラーメン・中華麺、焼きそば・皿うどん、パスタ・スパゲッティ、を指します。
今年の夏の「麺類」のトレンドを広く分析すると、Twitter、TV、スーパーマーケット、コンビニなど、複数メディア・業態で伸長していることがわかります。
温冷といった温度帯、辛さなどのフレーバー、あんかけなどの具材といった要素が多様になっている麺メニュー。
流通目線では店内仕入れの農産物の惣菜加工や季節メニューといった点など、農産物目線でも企画のヒントになったら幸いです。
メディア総合で見るトレンドのキーワードは、「ご当地」「具だくさん」「冷たい」
麺類の最近3カ月(22年6〜8月)のメディア総合トレンドランキングを分析してみました。
メディア総合ランキングは、外食・TV・WEB検索・Twitterなどメディアにおける出現スコアを総合したトレンドランキングです。
気になる点は、ご当地メニュー(台湾ラーメン、サイミン、ソーキそば、地域名の入ったメニュー)、具だくさん要素があるメニュー(橙枠)、冷たい麺メニューの台頭(赤枠)、翡翠麺(青枠)のような新しい麺メニュー、です。
湿度や天候・気温が移り変わりやすい6〜8月を豊かに過ごすために、上記のような価値を組み合わせた新しい麺メニューが台頭してます。
伸長メディア・業態のトレンドキーワードは「ぶっかけ」「アジア」
次に、対象カテゴリー分類における、メディア・業態別のトレンドランキングを分析しました。
赤枠は前項の伸長メディア・業態ですが、「ぶっかけ」系のメニューが伸長しています(青線)。また、サイミンやビャンビャン麺、チャパゲティなど、アジア(中華・韓国・エスニック)メニューも台頭しています。
前述のトレンド分析で気になる個別のメニューについて、深堀りしてみました。
翡翠麺 時系列グラフ
翡翠麺は、生地にほうれん草の搾り汁を練り込んで作られた中華麺です。外食チェーンのバーミヤンで糖質オフの翡翠麺を使った冷やし中華が登場するなど話題になってますが、弊社データでも、外食チェーン、Twitter、WEB検索で伸長傾向がみられます。一方、スーパーなどの業態では未出現なので、彩りや健康機能といった点も踏まえ広がっていく可能性はありそうです。
あんかけスパ 時系列グラフ
名古屋発祥とされるあんかけスパゲッティもTwitterを筆頭に伸長傾向だったこの夏。他にも「あんかけ」というワードが入った麺メニューも前述のランキングに散見するため、麺類の提案の幅も広がっていくヒントになりそうなメニューです。
天ぶっかけうどん 時系列グラフ
天ぷらをぶっかけたうどんは、Twitter・TVなど一部メディアでは伸長傾向のメニュー。丸亀製麺がこの夏期間限定メニューとしてタルタルソースと鶏天をのせたぶかっけうどんを発売しています。
天ぷらは野菜、魚介、肉などメニュー幅が広く、温冷ともに可能なうどんの広がりを感じさせる着目メニューです。
近江ちゃんぽん 時系列グラフ
滋賀県のご当地メニューの近江ちゃんぽんも6〜8月ではメディア総合ランキングでランクインしていました。長崎ちゃんぽんと異なりあっさり和風が特徴のメニューですが、TwitterやWEBを軸に伸長傾向です。コロナ禍で、スーパーやコンビニなど身近な業態でも旅行に行ったつもり企画として、ご当地の提案が広がっている流れは麺類でも着目です。
冷やしラーメン 時系列グラフ
Vol.1の鍋でもお話しましたが、下記Twitter・WEB検索・スーパー購買のように季節周期で進退しているメニューはある程度浸透し季節性が表れているメニューといえます。そんな中、冷やしラーメンは季節性があるもののTwitter・スーパーでは伸長傾向にあります。うどんやラーメン、パスタなど従来温かいメニューが定番でも、冷製メニューが増えているため、麺類の提案の幅がより多彩になっていく可能性を感じます。
サクッとわかる麺類のトレンドより
今年の夏の麺類の最前線を分析した結果、中華麺・うどん・パスタ・そばなど、ジャンルを問わず様々な具材、温度帯のメニューが伸長している結果です。
さらに、ご当地メニューやアジアメニューも台頭してきており、新しい価値を提案できるジャンルの筆頭といえます。
一方、外食が強く何かと話題の多い中華麺・ラーメンだけでなく、内中食にも強いうどん・パスタ・そばといったジャンルでも新しいメニューが台頭しています。
さらに、原料の高騰や外食・レジャーの回復といった刻一刻と変化する市場において、生活者のニーズに適した価値にリーチできる麺類の新しいメニュー提案はポイントになってきそうです。
麺類における夏のトレンド分析でわかった要素から、具だくさんや地域の食材など、手軽に野菜が取れたり、食べ応えはもちろん、新しい可能性が見え隠れします。皆様の事業のヒントになったら幸いです。
以上
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