(株式会社ウェザーマップ 寺本卓也)
こんにちは。農てんきな気象予報士の寺本卓也です。10月の終わりになってようやく暑さが落ち着いてきましたね。長引いた暑さの影響で野菜全体の生育もだいぶ遅れました。また私が執筆している10月31日時点では、季節外れの台風21号が本州に近づいてきています。
今年も異常といえる天気が続いています。今月の天気はどうなるか、また今年の冬はどうなるのか?最新のデータをもとに、農業に役立つ「農てんき」な情報をわかりやすく楽しくお伝えします。では今月の農てんきスタートです。
異例の台風21号の進路
今回は、まさに日本にいま近づいている台風や秋雨前線について予想をしていきます。
11月にそもそも台風が近づくのは異例です。1951年気象庁は台風の統計を開始しましたが、11月に台風が日本に来たのは1990年11月30日和歌山県に上陸した1回のみとなっています。
ではなぜ今回日本に台風が近づいてきているのかというと、原因は今年の猛暑をもたらした太平洋高気圧がしぶとく残っているからです。
この流れに沿って日本に近づく予想なのです。地球温暖化による海面水温の上昇などを考えると、これが来年以降普通の事となってくるかもしれません。
西・東日本で大雨のおそれ
台風21号は、2日(土)には温帯低気圧に変わる見込みですが、秋雨前線の雨雲と合体して西・東日本を中心に大雨となるおそれがあります。九州北部では200ミリの雨が予想されます。関東甲信では120ミリと各地でまとまった雨となりそうです。
畑の様子が心配ではありますが、土曜は河川や崖に近い畑などには近づかないように気をつけましょう。また変わりやすい予想となっています。最新の気象情報をご確認ください。
11月は強風(木枯らし)の季節
さて、雨が去った後は強風に注意が必要です。11月は季節の変わり目、きょうは晴れたけど、あすは雨という感じで短い期間でコロコロ天気が変わります。低気圧や高気圧が交互にやってきて、秋から冬にむかって空気も入れ替わっていくのです。
その時、性質の異なる夏の名残の暖かい空気と冬の冷たい空気がぶつかり合って風も強まります。この時期に始めて吹く北よりの強い風の事を「木枯らし1号」と呼びます。今月は強風にもお気をつけ下さい。
11月も暖かく
先月31日気象庁発表の1か月予報を見ると、平均気温は全国的に高い予想となっています。また暑さが戻ってくるのかというと、そうではありません。さすがに11月は平年値自体が日に日に下がっていきますので、暑いというよりは、いつもより暖かい秋がしばらく続くという予想です。
16日予想
ウェザーマップ独自の16日予想(東京)を見ていきます。すると気温の変動が大きいですが、20℃前後の日が多く極端に寒いという日は少ない予想です。11月としては暖かいという傾向といえます。
また太平洋側である東京は晴れの日が多いですが、日本海側の山形、新潟などはこの時期らしく雨の日も多くなってくる予想です。その他の地点をご覧になりたい方はこちら(https://forecast.weathermap.jp/)をぜひご確認下さい。
12月は急に寒く
続いて、先月22日に気象庁から発表された長期予報で12月の平均気温の予想を見ていきます。色が全く塗られていません。
気温は平年並みという予想を示しています。これは暖冬になるという意味ではなく、例年並みの寒さがやってくるという意味です。
今年は今まで暖かい傾向が嘘だったかのうように、12月に入ると一気に寒くなる予想が出ているのです。今月のまだ暖かく過ごしやすい陽気が続いているうちに、12月〜2月の厳寒期にむけて、野菜向けの保温資材を揃えたり順次設置したり、また越冬にむかない野菜の収穫など計画的にしていく必要がありそうです。
今のうちに大雪への備えを
先月のコラムでもお伝えしましたが、今年の冬の傾向は大きく変わっていません。今年の暑さ・暖かさから一転して、12月に入ると日本の上空には寒気が入り込みやすくなり、一気に冬の寒さがやってきそうです。
とはいえ毎日極寒という事ではなく、あまり雪は降らないし、寒くもならないなと油断しているタイミングで、「クリスマス寒波」、「年末年始寒波」などと、ときどき大寒波がやってくるような事が増えそうです。
日本海側での大雪の可能性高まる
降雪量の予想もあわせて確認しておきましょう。日本海側で雪が多くなるという予想です。今冬は日本海側での一発大雪、どか雪の可能性が高いです。何度もお伝えしますが、今月の暖かいうちに大雪への備えもすすめておきましょう。
10月も異例の暑さで発芽せず
話は変わりますが、私はテレビ局の企画で野菜を育てています。10月9日にレッドファイヤー(サニーレタス)の種をまきました。このサニーレタスの発芽適温は15〜20℃です。広島市も朝晩はだいぶ涼しくなってきたから大丈夫かなと思っていたのですが、甘く見ていました。
最高気温は、種まきの日から11日連続25℃以上の夏日を記録し、異例の暑さが続きました。そのため、育苗ポットの約半分は暑さで発芽しない事態が発生。今年の異常な暑さで野菜の相場が高くなっているという理由が身をもってわかります。
農業×防災の施設を取材
またこちらは先月私が取材しました広島市安佐北区にあるnuovo(ノーボ)の様子です。
この施設では災害時に役立つ技術を楽しみながら学ぶ事ができます。例えばショベルカーや、チェーンソーの扱い方など、ただ動かすだけでなく災害時に実際に使えて活かせる実践的な講習を受ける事ができます。
またnuovoには「農業」×「防災」=「農防」という意味が込められています。災害時に不足しがちな野菜の確保・備蓄をするために、根菜類を作ったりと農業の担い手不足にも貢献しているそうです。
楽しみながら防災
私も折角なので実際に体験してみました。
沢山のレバーがあり、初めは操作に混乱しましたが、トレーナーの方が優しく指導してくださり10分程度で基本的な動作ができるようになりました。
近年多発する大雨などによる災害現場では、ショベルカーを現地に手配しても操作できる人が少ないという問題があるようです。浸水してしまった田畑には、ゴミや流木がたまっている事も多いですから、自分自身で重機を操作できるようになるという力はきっと大雨災害が頻発するこれからの時代に役に立つなと感じました。
シリーズ『農てんき予報〜農業に役立つ天気の情報〜』のその他のコラムはこちら
当該コンテンツは、担当コンサルタントの分析・調査に基づき作成されています。
会員登録をすると全ての「コラム・事例種」「基礎知識」「農業一問一答」が無料で読めます。無料会員登録はコチラ!
公開日