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一般法人(一般企業等)の農業参入(貸借であれば、全国どこでも可能)
2009年6月の農地法等の改正により、従来は、農地の権利(所有権、賃借権等)を取得できなかった農地所有適格法人以外の一般法人(一般企業等)も解除条件付で農地を貸借することが可能となりました。
(1) 農地法の許可を受ける方法
一般企業等が農地の貸借(賃貸借・使用貸借)により、農業に参入する場合、次の基本的な要件(個人と共通)及び追加的要件をすべて満たせば、農業員会等の許可の対象となります。全国どこでも可能です。
<基本的な要件>
① 農地のすべてを効率的に利用すること
② 一定の面積を経営すること(農地取得後の農地面積の合計が、原則50a(北海道は2ha)以上であることが必要)※1※2
※1 この面積(下限面積)は、地域の実情に応じて農業委員会が引き下げることが可能となっています。農林水産省調べ(令和3年7月14日現在)によると、全国の約7割(1,248市町村)の市町村において地域の実情に応じて別段面積が定められています。新規参入を検討中の地域の面積については、当該市町村農業委員会にご照会ください。
※2 この下限面積に係る規定は、令和4年(2022年)5月に成立した農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律による農地法改正により廃止されました(基盤法等の改正法の施行期日は、公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日(令和5年4月1日予定)となっています。)
③ 周辺の農地利用に支障を与えない利用方法であること
<追加的な要件>
① 貸借契約書に解除条件(農地を適切に利用しない場合に契約を解除すること)が付されていること
② 地域における適切な役割分担の下に継続的かつ安定的に農業経営を行うと見込まれること
③ 業務執行役員又は重要な使用人が1人以上農業に常時従事すること
<農業委員会への許可申請>
申請は、原則、貸主との共同申請が基本となります。申請書等の提出に当たり、特に、追加的要件関係事項、例えば、要件①では、解除条件付貸借契約書の写しの添付、要件②では、確認書等による地域との役割分担の担保、また営農計画等で「継続的かつ安定的な農業経営を行う」見込みを明示するなどすべての要件をクリアしていることを具体的に示す必要があります。
(2) 経営基盤法に基づく「農用地利用集積計画」により権利を取得する方法(農地制度の概要 2の(注)を参照のこと)
一般企業等が市町村に利用権設定の申し出を行い、市町村が作成・公告する農用地利用集積計画により解除条件付利用権の設定を受ける方法です。この場合、農地法の許可は要しません。
<農用地利用集積計画の要件>
① 計画内容が市町村基本構想に適合すること
② 利用権の設定等を受ける者の要件(解除条件付利用権の設定を受ける一般企業等では、ア及びウのすべての要件を満たすこと)※
ア 農用地のすべてを効率的に利用すること
イ 農作業に常時従事すること
ウ 一般法人に係る追加的要件
(ア)地域の農業者との適切な役割分担の下に継続的かつ安定的に農業経営を行うと見込まれること
(イ)業務執行役員又は重要な使用人が1人以上農業に常時従事すること
③ 利用権の設定をする土地について原則、権利関係者すべての同意を得ていること
※ 農地法に規定する下限面積要件は適用されていないので、下限面積を満たす必要はありません。
<利用権設定等の申し出>
農用地利用集積計画により農地の権利(解除条件付利用権)を取得するには、当事者が市町村に取得する利用権が解除条件付であることを確認の上、所定の申出書、営農計画書(新規就農者の場合)等の書類を提出する必要があります。農用地利用集積計画の作成は、市町村の判断に委ねられ、当事者に農用地利用集積計画の作成を請求する権利は与えられていません。作成の可否は市町村が行います。
審査では、前述の基本構想に適合しているかどうか、解除条件付き利用権に係る受け手要件を満たしているかがポイントになります。所定の申出書、添付書類などの書類で、これら要件をクリアできていることを具体的に明らかにする必要があります。
市町村が、農業委員会の決定を経て、農用地利用集積計画を作成し、これを公告した翌日から権利が設定されます。
※ 市町村は、現在、利用権の設定等を希望する者に対しては、極力農地バンクの活用を勧奨するよう指導されています。
(3) 中間管理事業法に基づき農地バンクから権利を取得する方法
<手続きの流れ>
農地バンク(農地制度の概要(4)を参照)は、通年で受け手希望者を公募しています。農地バンクから農地を借り受けるためには、農地バンクが実施する借受け希望者の公募に応募して、借受け希望者として登録、公表されていることが必要です。応募者の中から、「貸付けルール」に基づき、最も適当な借り手を選定し、「農用地利用配分計画」を作成します。都道府県知事の認可、公告により配分計画の定めるところにより権利が設定される。農地法の許可は不要で、出し手と個別に交渉する必要はありません。
<公募への応募が第一歩>
農地バンクは、2014年に都道府県に1つ整備された法人で、その目的は、担い手への一層の農地の集積・集約化の推進にありますが、地域の事情は多様です。担い手不足、遊休地の増加等の地域も少なくなく、農地の有効利用のためには、多様な担い手の確保が欠かせません。
農地バンクが受け手希望者を公募する理由は、ここにあります。既存の会社組織のまま農業参入を計画中の法人にあっては、農地バンクによる借り手公募への応募が農地取得の第一歩と考えられます。
応募に当たっては、次の事項等を明らかにした申込書を提出します。
① 借受けを希望する農用地等の種別、面積、農用地等の条件
② 借受けた農用地等に作付けしようとする作物の種別
③ 借受けを希望する期間
④ 現在の農業経営の状況
⑤ 当該区域で農用地等を借受けしようとする理由
上記のとおり、農地取得の3つの方法について、それぞれ特徴があります。大きな違いは、個別交渉を必要とするか否かの違いです。
いずれの場合でも、農地の手当、営農計画の作成、新規就農支援などに関し、地元の市町村、同農業委員会、農地バンク、都道府県などに前広に相談、問い合わせするなどにより、その上で自社にとって最良の方法を選択しましょう。
(参考)一般法人(リース法人)の農業参入の動向
農地を利用して農業経営を行う一般法人は、2019年12月末現在で3,669法人となっています。2009年の農地法改正によりリース方式による参入を全面自由化し、1年当たりの平均参入法人数は改正前の約5倍のペース(平均65法人/年(2008年〜2009年)→平均379法人/年(2009年〜2019年))で増加しています。
参入リース法人(3,669法人)の農業参入の動向をみると、業種別では、農業・畜産業1,091法人(27%)、サービス業805法人(22%)、食品関連産業685法人(20%),建設業335法人(10%)で過半を占めています。
次に、営農作物別では、野菜1,531法人(42%)、米麦等651法人(18%)、複合559法人(15%)、果樹507法人(14%)などとなっており、野菜経営を行う法人の割合が高くなっています。
また、借入農地面積規模別法人数を見ると、1ha未満が2,122 法人(57%)、1ha以上5ha未満1,121法人(31%)、5ha以上20ha未満328法人(9%)、20ha以上98法人(3%)となっています。リース法人の借入面積の合計は、10,804ha、1法人当たりの平均面積は2.9 haです。
当該コンテンツは、「一般社団法人 全国農業会議所」の分析に基づき作成されています。